2020-05

6・4(火)アンネ=ゾフィー・ムター ヴァイオリン・リサイタル

   サントリーホール  7時

 実に久しぶりに聴くムター。
 今回はランバート・オーキスのピアノとの協演で、モーツァルトの「ソナタ ト長調K.379」、シューベルトの「幻想曲」、ルトスワフスキの「パルティータ」、サン=サーンスの「ソナタ第1番」というプログラムを披露してくれた。

 容姿と演奏にあふれる、如何にも女王然とした風格もさることながら、艶やかな音色とあふれるカンタービレ、スケールの大きな音楽づくり、聴衆を惹きつけずにはおかない雰囲気など、相変わらず健在である。
 それに加えて最近は、何か極度に粘り気のある、耽美的な表情がいっそう濃くなってきたのではなかろうか? 冒頭のモーツァルトのソナタなど、いまどきこんなねっとりした甘美なモーツァルトを創る人はちょっと他に例を見ないだろう――それはそれで彼女の美学だし、揶揄非難される筋合いはない。しかもシューベルトの「幻想曲」になると、この濃厚きわまるカンタービレが見事に生きて来る。最後の追い込みも、堂々たる風格だ。

 さらに面白かったのはルトスワフスキの「パルティータ」。こういう曲においてさえ、彼女の演奏は決して鋭角的に刺々しくならず、あくまで温かく、一つ一つの音を慈しむようなものになるのである。サン=サーンスのソナタでも彼女のこの個性は充分に発揮されたが、これはいかんせん、曲がつまらない。
 アンコールは、ラヴェルの「ハバネラ」、マスネの「タイースの瞑想曲」、ブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」。最初の2曲での妖艶で甘美を極めた演奏に、今のムターが貫く独自の姿勢を聴くような気がした。

 オーキスの演奏は、いつもながら温かい。昨夜リムが弾いたヘヴィ・メタル的ベートーヴェンの音がまだ耳に残っていただけに、今夜オーキスが最初にモーツァルトを弾き始めた柔らかい音を聞いた瞬間、何だかおそろしくホッとして、「ピアノってのはこういう音なんだよなあ」などと思ってしまった・・・・。

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