2008-05

3・16(日)旅行日記第2日
ザルツブルク・イースター音楽祭 小澤征爾

  ザルツブルク祝祭大劇場

 「ヘルベルト・フォン・カラヤン記念コンツェルト」と題され、今年が生誕100年にあたるカラヤンに捧げられた演奏会。
 彼の愛弟子オザワをゲスト指揮者に、カラヤンに見出されたアンネ・ゾフィー・ムターをソリストに迎えるという趣向。凝った企画だ。

 小澤征爾は、先年この音楽祭にゲスト指揮者として招かれながら病気のためキャンセルした経緯があった。その時はたしかベートーヴェンの第7交響曲か何かを振るはずだったと思うが、しかし今回は、カラヤンがショスタコーヴィチの交響曲の中で唯一レパートリーにしていた「交響曲第10番」を依頼されたわけで、これはむしろオザワにとってもいろいろな意味で好都合だったのではなかろうか。
 彼もショスタコーヴィチの中では「5番」と「10番」をレパートリーにしているのだし、それにこのような現代ものの方が、彼としても聴衆をねじ伏せやすいだろう。

 その「10番」、激烈なアレグロの第2楽章では、予想通りベルリン・フィルのすさまじい音響的威力を存分に発揮させた。とはいえこの曲には、むしろ叙情的要素の方が多く、その部分で小澤の感性がより映える。
 私の席は前日と同じ場所だったので、オーケストラの音色はやや淡彩に聞こえ、陰翳にも不足するように感じられ、もっと前方で聴けたらという思いがしきりであった。だが第3楽章における、いわゆるショスタコーヴィチの名のモノグラム(D−Es−C−H)を提示する木管のリズムの響きの良さ、それにホルンの名手バボラークが朗々と吹くエリミーラ・ナジーロワ(ショスタコーヴィチが秘かに憧れたという若い女性)の名のモノグラム(E−A−E−D−A)の爽快な美しさなど、作品のポイントも充分に描かれていた。もっとも、オザワはもともとそのような標題音楽的な要素にはこだわらないタイプの指揮者だけれども。

 プログラム前半は、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」。
 小澤の指揮はこれも予想通りで、第1楽章第2主題に向かう個所での16分音符など、思わず苦笑させられるほど几帳面なものであったが、ここぞという個所ではピタリと「決める」のが彼らしい。展開部冒頭のテュッテイは実に壮大であり、このあたりからオーケストラとの呼吸が合ってきたのではないかと思う。
 ところでムターの演奏だが、これまた彼女の最近の境地を示すがごとく個性の強いもので、特にカデンツァでは緩急自在の妙味を示し、あたかもベートーヴェンの作品の様式を基本にしながらも自由奔放な飛翔躍動を試みるように多彩な表現を聴かせていた。極限の最弱音を求めた第2楽章と、激情に満ちた第3楽章との対比も素晴らしい。この協奏曲をこれほど面白く聴けたのは久しぶりという気もする。

 話はオザワに戻るが、交響曲が終った後の拍手と歓声は、身贔屓の日本人(つまり私のことだ)がうれしくなるほどの盛大さだった。第1チクルスには日本人客は少ないから、拍手は欧州の聴衆から出ているのである。楽屋にはエリエッテ女史(カラヤン夫人)らも来て、かなり賑やかだったのに一安心。何せ昨年ウィーンでの「復活」(5月17日)終演後の楽屋があまりに寂しく、私も心を痛めていたので・・・・。

コメント

小澤バンザイ!

去年ラトルの演奏をRANG MITTEで聴くと酷い音でしたが、ただハイティンクの時だけは2階席でも良いい音できけましたので、小澤も期待していました。今年は2階席は良い音でしたが、どうも平土間席奥がだめなようですね。
 ムターの演奏はすばらしいものでしたが、少しgoing my way的な演奏で小澤も少しfollowするのに苦労しているようでした。ただ逆に言えばムターのfollowをできる指揮者は今、小澤ぐらいしか居ないとも言えましょうが...。ヨアヒムのカデンツァは大変良い演奏でした。久しぶりにこのカデンツァを聴いたような気がします。アンコールのバッハの無伴奏パルティータ6番(?)は心の奥底に浸み入るような名演だと思います。命に関わる大病を患い引退まで考えているムターの、死の恐怖とあきらめ、生への憧れ、など万感の思いが表れ。た非常に深い演奏であったと思います。私も死の病と向き合っているので、ムターの心情が良く理解できます。
 ショスタコーヴィッチのSy10はカラヤンの名演に迫る名演と思います。ただCDで聴く限りはカラヤンの方がもう少し精密で細かい演奏であったと思います。
 カラヤン夫人も会場にいらっしゃいました。

わたしは、第二チクルス(3/21)の演奏を聴きました。

座席による、音響の話が出てきましたので、ちょっと私の考えを。
オペラ・コンサートともに、私は二階席(RANG)のほうが優れていると思います。
平土間の前方は、音がクリアーですけれど、厚みに欠けます。
平土間後方の「雨宿り」席は、明瞭度・厚み双方に欠けます。

RANGの席では、(席の差はありますが)バランス・明瞭度ともかなりのレヴェルだとおもいます。(しかし、ほかの名コンサートホールに比べれば、「すばらしい!」とは言えませんが・・・)
私は、RANG後ろの最低価格席にもっぱら座っています。
音響的には、RANG1列目(特に、脇のLOGE)が最高かと思いますが、残念ながら、私には手が届きません。

演奏については、皆さんがおっしゃっているとこととほぼ同様ですので省きます。

ひとつ、気になったことを。
最近、とみに観客の鑑賞態度が悪くなったことです。
ベートーヴェンでは、第一楽章終了後に大拍手が起きてしまいました。
また、カーテンコールで、カラヤン未亡人が起立して、小澤氏が天のカラヤン氏を指さしても、感心ももたず、帰宅を急ぐ人が多くいたことです。(もしかしたら、起立した老婦人がだれかわからなかったのかも?)

私は、イースター音楽祭には、1991年以来、二年に一度は出かけていますが、(夏の音楽祭ほどではないしろ)ザルツブルグにやってくるひとも変わったな、としみじみ思いました。

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