2020-04

3・9(土)アンドリス・ネルソンス指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

    フィルハーモニー(ベルリン)  8時

 ベルリンは曇り空で、風こそ無いが、マイナス4度とか、猛烈に冷える。夕方になって雪が降り始めたが、夜遅くには止んだ。こういう天候の時には、このベルリン・フィルの本拠、フィルハーモニーというホールは、何と辺鄙な所にあるのだろう、と恨めしくさえなる。

 今夜は屈指の若手、ラトヴィア出身の35歳、アンドリス・ネルソンスの客演指揮。
 モーツァルトの「交響曲第33番」、ワーグナーの「タンホイザー」序曲、ショスタコーヴィチの「交響曲第6番」という、ちょっと変わった組み合わせだ。

 我ながらそそっかしいことに、実は会場に行くまで、「タンホイザー」は「序曲とヴェヌスベルクの音楽」をやってくれるのだとばかり思い込んでいた。したがって大いに落胆。それにしても随分短いプログラムである。休憩30分を挟み、9時45分には終ってしまった。
 雪も降っている夜だから、早く終るのは有難いとはいえ、「バッカナール」を彼の指揮で、しかもベルリン・フィルの豪壮な音で聴けなかったのは、かえすがえすも残念である。

 モーツァルトの「交響曲第33番変ロ長調」(ベルリン・フィルは解説パンフレットでこういう伝統的な表記を採っている。最近の研究では旧番号を言ってはいけないのだぞ、などというアカデミックな考え方に拘泥していないので、解り易い)では、ネルソンスは、極めて柔らかい音色をベルリン・フィルから引き出した。踊るような身振りで指揮をする彼の姿そのものが音になった、といっていいかもしれない。
 フィナーレでの木管の均整のとれたリズムとアクセントを筆頭に、全曲にわたり細かい神経を行き届かせた演奏――ではあったが、ただ、そのわりには、意外に「あまり面白くない」。形は充分に整ってはいるのだけれど・・・・という類の演奏とでも言うか。

 ところが、「タンホイザー」になると、ベルリン・フィルの創り出す音楽は、俄然活気を帯びて来る。どちらかと言えばネルソンス色の「すっきり味」の感触ではあるものの、前後の「巡礼の合唱」の昂揚個所などでの押しの強いエネルギー感は、やはりこのオケならではのものであろう。

 そして、ショスタコーヴィチ。ベルリン・フィルの楽員はこの作曲家にほとんど共感を示さない――という噂を聴いたことがあるが、その当否は別としても、今夜の「第6番」が、およそショスタコーヴィチの既存のイメージとは異なる演奏だったのには驚いたり感心したり、またそれなりに面白く、実に興味深かった。
 いい加減に演奏していたというのではない。それどころか、おそろしく雄大なのである。
 第1楽章など、堂々とした厚みのある音による、まさにシンフォニックな演奏だ。ましてフィナーレにいたっては、この作曲家特有の軽妙洒脱(?)なアイロニーというものからは程遠く、むしろ重厚で正面切った、生真面目なところさえあるスケルツォ――という雰囲気の演奏なのであった。

 ベルリン・フィルのこうした頑固な個性には、さすがと申上げるほかはないが、やはりネルソンスも、このドイツ文化の巨大な要塞のごときオケに挑むには、まだちょっと若いか、ということにもなろう。しかし、その強豪オケからさえ、これだけ緻密な均衡の構築を引き出したのは、立派と言うべきである。これは、昨年暮にキリル・ペトレンコがスクリャービンの交響曲を振った時に感じたのと同様であった。

 今夜は定期の3日目だが、客席は文字通り満杯、オケのうしろの席(PODIUMSPLATZE)までぎっしりと客が入った盛況ぶり。「第33番」の反応はそこそこだったものの、「タンホイザー」以降は沸きに沸き、ネルソンスへの拍手はすこぶる盛大で、幸せなお開きとなった。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1601-dc9852f3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」