2008-05

3・8(土)藤原歌劇団 ロッシーニ:「どろぼうかささぎ」

  東京文化会館 マチネー

 新国立劇場が「セヴィリャの理髪師」ばかり上演している間に、藤原歌劇団の方はやや珍しい「どろぼうかささぎ」を意欲的に取り上げた。何でも今回のが、舞台上演としては日本初演にあたるのだそうな。序曲があまりに有名で聴く機会も多いだけに、不思議に本邦舞台初演という感じがしない。話の運びにおかしなところが多いオペラではあるが、音楽が良いので、全2幕の正味3時間、大いに楽しめた。意義ある上演であった。

 3日間連続で行なわれた上演のうちの、この日は中日の邦人主役の公演。
 高橋薫子がニネッタを歌ったが、この人の歌と演技の表現力の多彩さには、本当にいつも感心する。声質が澄んできれいなのはもちろん、たとえば苛々したり怒ったりする演技の際に、声楽的にバランスを失わぬ範囲でちょっと声を荒げる表情なども実に巧い。恋人ジャンネットを歌った五郎部俊朗は、演技に素人臭さが抜けないのが問題だが、声には伸びがある。

 指揮はアルベルト・ゼッダ。オペラの聴かせどころを心得て、実に手際のいいロッシーニを聴かせてくれる。東京フィルは例のごとく少し粗いものの、このくらいの出来ならば満足すべきかもしれない。
 ダヴィデ・リヴァーモアの演出はごく定型的ではあるけれど、村人たちを演じるリアルな合唱団と、裁判の場や処刑の場におけるコロス的な合唱団とをそれぞれ性格的に描き分けたあたり、芸の細かさを見せていた。

 もう一つ人気を集めたのは、かささぎを「演じ」た「飛行機」だ。ラジコンで操縦され、舞台上を何度か飛び回るのだが、翼こそ動かぬものの、なかなかよくできている(袖へ飛び込む際に時々墜落するのと、音楽が静かな時にブンブン回転音が聞こえるのはご愛嬌だったが)。この操縦はティミートゥリ・ロッシという人で、何でもこのジャンルの世界チャンピオンなのだとか。カーテンコールの際には彼も舞台に現われ、「かささぎ」に客席上方を飛び回らせるデモンストレーションを披露。観客も「オー」と唸って万雷の拍手。

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