2020-02

11・24(土)第8回浜松国際ピアノコンクール本選2日目と入賞者発表

     アクトシティ浜松大ホール  2時

 2日目に登場したのは、韓国人1人と日本人2人。
 キム・ジュンと中桐望がブラームスの「1番」を弾き、佐藤卓史がショパンの「1番」を弾く、という組合せだった。

 キム・ジュン(29歳、フランクフルト音楽・舞台芸術大学)は、第3次予選の際にも自分の主張をはっきり出していた人だったが、今日の協奏曲でもすこぶるエネルギッシュな演奏を聴かせた。豪快で骨太なタッチで、自信満々の音楽をつくる。特に第1楽章ではその力強いアプローチが、若きブラームスの気魄を表出するのに成功していたであろう。
 ただ、あとの2つの楽章が、その力感に比してちょっと単調になったかという印象で、何か決め手を欠くという演奏になったのが惜しい。

 続いて中桐望(25歳、東京芸大大学院)が登場。
 キムの豪快な演奏のあとで同じブラームスの「1番」を弾くというのは、いくら美女でも、音楽の迫力の点ではちょっと分が悪いのではないか、というのが取材スズメたちの下馬評の一つだったが、どうしてどうして。
 ワタシはワタシのやり方で・・・・とばかり、キムとは正反対の抑制したテンポと表情の、じっくりと一つ一つの音を慈しむような弾き方を以ってソロに入って来たのを聴いた時には、「やるなこの人、その調子だ」と秘かに拍手を贈りたくなったほどである。
 彼女は、ゆったりした弱音の主題やフレーズの個所ではいっそう大きくテンポを落して、しかも繊細な味を出す。第2楽章などは、かつてのグレン・グールドほどとは言わぬまでも、極めて沈潜したモノローグを織り成すといった感である。その遅いテンポの、じっくりと歌い上げる演奏が、時に曲の構築性を曖昧にすることがあったとはいえ、自分自身のアプローチを明確に出すという姿勢は高く評価できる。

 最後に登場したのが、佐藤卓史(29歳、ウィーン国立音大)。
 ブラームスの「1番」を2回続けて聴いた後では、このショパンの「1番」は、なんと爽やかに綺麗に聞こえたことだろう! いや、たしかにその演奏自体が、実に綺麗だったのだ。彼は、何の屈託もなく、流れるように、滑らかに弾く。音楽が、些かの逡巡も無しに、美しく紡がれて行く。今日は井上道義と東京響が、昨日とは打って変わってしっとりとした音(但しファゴットだけは荒っぽい)でソリストを支えていたが、佐藤のソロも、恰も室内楽のようにオケとの調和を図って行った。第1楽章半ばのソロや第2楽章では、彼のカンタービレの見事さに思わず聴き惚れたほどだ。
 不満といえば、それがあまりに達者に屈託なく流れすぎることだろうか。それゆえ、演奏が時に単調な印象を与えかねない。曲想に応じて、もっと色合いや陰翳の変化が欲しいところではあった。

 これで本選は終了。
 1時間以上の審査時間を経て、予定より20分遅れて同じ大ホールで審査結果発表と表彰式が行なわれたが、協賛社名やら特別来賓やら支援者やらの名前が読み上げられ、更に感謝のコメントやらスピーチやらのセレモニーが延々と続く(通訳が入るからいっそう長くなる)、結果発表までに30~40分を要したのはチト長いし、野暮ったい。

 で、海老彰子審査委員長から発表された入賞結果は、以下の通り――。
 第1位及び聴衆賞:イリヤ・ラシュコフスキー
 第2位:中桐望 
 第3位及び室内楽賞:佐藤卓史
 第4位:アンナ・ツィブラエワ 
 第5位:キム・ジュン
 第6位及び日本人作品最優秀演奏賞:内匠慧。
 この他、奨励賞が、第3時予選まで残っていたアシュレイ・フリップ(英国、23歳)に贈られていた。
 私の予想とは若干違ったところもあるが、1位のラシュコフスキーに関しては、まず異論のないところである。

 ちなみに、今年の応募者総数は288名、応募年齢制限の上限は30歳だった由。平均年齢が若干上がったため、出場者の年齢の幅が広くなる結果となり、いろいろな考え方を呼ぶだろうが、まあ致し方ないだろう。
 ソロと室内楽・協奏曲の3ジャンルによる審査が採られたというのも、今年の新機軸だそうだ。これは当コンクールの特色ということで、支持したい点である。

     ⇒ショパン 特集

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