2019-05

11・12(月)ゲルギエフ&デセイ ドニゼッティ:「ランメルモールのルチア」

    サントリーホール  7時

 ワレリー・ゲルギエフ指揮するマリインスキー管弦楽団の来日は、昨年2月以来のこと。
 前回はベルリオーズの「トロイアの人々」で快演を披露したが、今回はドニゼッティの「ランメルモールのルチア」全曲。

 演奏会形式で、タイトルロールをナタリー・デセイ(ドゥセ)、エドガルドをエフゲニー・アキーモフ、エンリーコをウラジスラフ・スリムスキー、ライモンドをイリヤ・バンニク、アリーサをジャンナ・ドムブロスカヤ、アルトゥーロをディミトリー・ヴォロバエフ。日本側からはノルマンノ役の水口聰と、新国立劇場合唱団が参加していた。

 歌手陣の面から見れば、どうやら今夜のコンサートは、ナタリー・デセイ1人で支えられていた、といってもいいほどだろう。とにかく、彼女の存在は、ずば抜けている。
 声の見事さもさることながら、歌唱の微細なニュアンスや劇的な表現力は完璧というにふさわしく、彼女が歌い出すと、音楽に虹のように多様な色彩の変化が生れてくる。悲劇的な女性ルチアの感情の変化――第1幕での愛の幸福感が第2幕では悲しみと絶望に変じ、第3幕では狂気に陥る、その表現の多様さをこれほどニュアンス細かく描き出せるソプラノ歌手は、今日、稀なる存在ではないかとさえ思える。

 「狂乱の場」では、今回は作曲者の原案通りグラスハーモニカが使用されていた。その視覚的かつ音色的な珍しさが、初めのうちはデセイの歌への集中力を欠かせる傾向なきにしもあらずだったが、――満員の客席は文字通り息を呑んで彼女の歌に聴き入った。

 ゲルギエフの「もって行き方」は、相変わらず巧いの一語に尽きる。
 舞台上演の時と違い、演奏会形式オペラの時の彼のテンポは速くなることが多いが、今回もかなり速めであった。ランメルモールの城の祝宴の場の合唱なども疾風の如きテンポで進められ、時にアンサンブルが追いつかないところもあったし、第2幕最後の6重唱と大アンサンブルも、また第3幕第1場のエドガルドとエンリーコの憎悪あふれる応酬の場面――この第1場をカットせずに演奏してくれたのはありがたかった――などもおそろしく速いテンポで、そのため詩趣が失われる傾向も、なくはなかった。

 もっとも、遅いテンポでしんねりむっつりやられるよりは、この方がどれほどいいかわからない。それに、劇的昂揚感を味わわせてくれるという面では、ゲルギエフのそれは、常に天下一品である。
 さらに・・・・7時開演で、休憩30分を挟み、ほぼノーカット演奏ながら、それでも9時55分に演奏が終了したのは、この速いテンポだったからこそであろう。

 それにしても、ゲルギエフに率いられたマリインスキー管の、歌を支える呼吸は見事。さすが歌劇場のオーケストラならではの熟練である。全曲冒頭のホルンなど金管の音色の陰翳の深さなど、まさにロシアのオケの音。
 「マリインスキーの音」が、変貌しつつも健在だったのはうれしいことであった。

 なお、オケの名称表記は、ここでは英語表記に準拠して「マリインスキー管弦楽団」とした。招聘元の表記は「マリインスキー歌劇場管弦楽団」だが、それをいうなら正式には「マリインスキー劇場管弦楽団」であるべきかな?と。

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