2020-07

11・11(日)エド・デ・ワールト指揮NHK交響楽団A定期

   NHKホール  3時

 武満徹とワーグナーを組み合わせるとは、面白いプログラム構成である。

 前者は「遠い呼び声の彼方へ!」と「ノスタルジア~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」の2曲で、ヴァイオリンのソロは、N響のコンマスの1人、堀正文が弾いた。
 そのソロも、オーケストラも、デ・ワールトの指揮も、予想通り端然とした演奏。ネクタイをきちんと締めたタケミツといったイメージか。
 聴きながら、案外この音楽は、そのあとの「ヴァルキューレ」でジークムントとジークリンデが出会う場面の叙情的な弦の音楽と共通するものがあるような気もするな、などと思いをめぐらしたり――。

 休憩後がその「ヴァルキューレ」第1幕の全曲。
 デ・ワールトの指揮は、これも今までの彼の流儀から解るとおり、中庸を得て端整なもの。叙情的な個所ではN響の弦の良さを存分に全開させて魅力的だが、その反面、終結での歓喜の陶酔の場面の音楽は、決して熱狂的、忘我的なものにまでは高まらない。
 だが、N響の演奏とともに、この作品のオーケストラ・パートの美しさを満喫させてくれたという点で、私は満足である。

 それにしても、煩わしい舞台に気を取られることなく、音楽そのものに没頭できるという点で、演奏会形式上演というのは――いいものだ。

 歌手たち3人は、ステージ前方で歌う。1階席後方で聴くと、声が痛快なほどビンビン来る。
 ジークムント役のフランク・ファン・アーケンは体格もいいし、声にも野性的じみた迫力があるが、今回はノドの調子があまりよくなかったらしく、「ヴェルゼ!」の絶唱のあとは、ペットボトルの水をのべつ飲みながらの必死の熱演になっていた。水を飲んだ直後は暫く声の調子が戻るものの、すぐまた荒れて来るので、幕切れなどは少なからずハラハラさせられた。

 ジークリンデのエヴァ・マリア・ウェストブレークは、表情の演技といい劇的な歌いぶりといい、堂に入ったもの。文句のない出来である。フンディングのエリック・ハルフヴァルソンも、底力のある声で凄みを利かせてくれた。

 字幕(岩下久美子)は明快だったが、ひとつだけ。
 ジークムント(勝利の加護を受けた者、の意)が、その悲劇的な身の上ゆえに「フリートムント(平和の加護を受ける者)かフローヴァルト(喜びを司る者)と名乗りたいが、今はヴェーヴァルト(悲しみを司る者)としか名乗りようがない」などと自らの名を喩えて語る個所だが、ここは、原語だけでなく、上記のようにそれぞれの訳語をも字幕に載せた方が、初めて聴く人にも親切だったのでは?
 というのは、終演後にロビーに出て来た2人の女性が「なんであんなに名前をコロコロ変えるの?」「さあ」と囁きあっているのを耳にしたので。

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