2019-05

11・9(金)ライマン:オペラ「メデア」日本初演 初日

   日生劇場  7時

 サントリーホールから、近くの日生劇場に移動。
 アリベルト・ライマンの新作オペラの日本初演、いよいよその初日。
 去る5日の項で、リハーサルの取材報告としてある程度のことは書いたので、重複は避ける。

 今日の歌手陣は別の組(11日の公演と同じ組)だが、こちらもみんな見事。
 題名役のメデアは、飯田みち代が歌い演じた。この種のドイツ現代オペラにはすでに充分な経験を積んでいる人だ。
 今日は少し声が細いかな、という感もあったが、――しかし今回の演出(飯塚励生)とドラマトゥルギーではグリルパルツァーの原作のイメージが生かされ、子供や夫イヤソンの愛人を殺すメデアがただ怪女として描かれるのではなく、夫に裏切られ追放され、絶望して窮極の行動に走るまでの過程が悲劇的に描かれているので、その意味ではまさに演技も歌唱も、虐げられた可哀想な女メデアとしての表現にぴったりであった。

 彼女の乳母ゴラを演じ歌ったのは小山由美。彼女もこの種のオペラには千軍万馬のつわものだから、気位の高い乳母としての表現力といい風格といい、堂々たる存在感を示す。
 一方、王子イヤソンは、かつてアルゴー船の勇者たちとともに金羊皮を奪還した勇者とも思えぬ男として描かれているが、その危なっかしい男の性格を、宮本益光が巧妙に歌い演じていた。

 コリント王クレオンの大間知覚、その娘クレオサの林美智子、使者の彌勒忠史、いずれも見事な舞台を示して、歌手陣はすこぶる充実していた。
 特に林美智子は、クレオサの愛らしさと横柄さを巧く表現していたが、ただ彼女のメデアに対する感情が二転三転するにいたるきっかけは、多少解かりにくかった。これは演出のせいであろう。

 下野竜也が指揮する読売日本交響楽団の演奏については、5日のリハーサルの項で書いたとおり。リハの時より、演奏が多少慎重になり、野性味を失った感もあったものの、それでも充分に立派なものであった。

 問題は、演出と装置である。あのような制約のある舞台構築では随分難しかったろうが、やはり今回のように2つの管楽器群と演技空間とを舞台上に並列して配置するという形には、やや無理があったのではなかろうか。
 しかも舞台上のオケの譜面灯の光の眩しさは、冒頭の夜の場面への観客の注意力を散漫にし、ドラマへの集中力を欠かせてしまう。眼は次第に慣れてくるとはいえ、それでも感覚的に時々煩わしくなることがある。
 これがホールオペラとか、セミステージ上演とかいうスタイルなら、それなりの割り切り方もあるが、今回はそういうたぐいのものではなかったはずだし。

 世は演出優先の時代で、大体は演奏者側が犠牲を強いられるというのが今日の嘆かわしい風潮だが、どうやら今回は逆に、音楽家側の発言の方が優勢だったとみえる。まずオーケストラがいかにいい音で鳴るか――を第一優先順位にして、あとからそれにあわせて舞台を造った・・・・のでは? 
 それはそれで好いことだし、一つの解決方法であろう。ただ、来年のライマンの「リア」上演の際には、もう一段の巧い工夫をお願いしたいところ。

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