2020-04

9・24(月)スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団

    サントリーホール  7時

 スクロヴァチェフスキ、来月の3日には89歳になる。
 何度も繰り返すようだが、本当に元気だ。歩くのも速いし、指揮台での身のこなしも敏速そのもの、カーテンコールでの動きも素早い。

 その代わり、テンポは極度に遅くなる個所がある。1曲目の、ウェーバーの「魔弾の射手」序曲のアダージョの最初8小節のテンポの遅いこと! 8分休符の長さもたっぷり保って、なかなか次のフレーズに入って行かないという具合だ。

 しかし、この日のプログラムの最後に組まれたワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の、前奏曲冒頭の例の「愛の憧れの動機」を一度出しては長い長い休止を置き、また一度出しては更に長い間を置き・・・・という遅いテンポの演奏と聴き比べると、「トリスタン」の冒頭はまさに「魔弾の射手」序曲冒頭の遠いエコーなのであり、――もしやスクロヴァチェフスキは両者を非常に遅いテンポで演奏することにより、両者の関連を意味づけたかったのかもしれない、ということにハタと思い当たる。
 そのスクロヴァ氏の意図についての当否はともかく、ワーグナーが若い頃から敬愛していた先輩ウェーバーへのオマージュを、こんなところにも潜めさせておいたのか、などと、勝手に目からウロコの心境になって愉しむのも悪くないだろう。

 ちなみにこの「魔弾の射手」序曲、チェロとコントラバスのppをfでクレッシェンドさせたり、pのピッチカートをffで演奏させたり、スクロヴァ氏的な趣向が随所に聴かれた。特に大詰めの3小節は一風変った面白い結びになっていたが、あれは彼の解釈か、何か根拠があるのか、伺いたいところだ。

 2曲目は、スクロヴァチェフスキ自作の「クラリネット協奏曲」。27分ほどの多彩な音色を持つ作品だ。
 最初の2つの楽章ではミステリアスなまでに沈潜した、しかも常に秘めやかな躍動を感じさせる曲想と、激しい動きの最強音との対比が目覚しい。特に第2楽章の美しさは見事で、全曲の頂点ともいうべきもの。第3楽章に入るや突如としてスケルツァンドの舞曲的な躍動になるのが意外で、その終結が実にあっけない形を採るのにも驚かされるが、まるでこの楽章はエピローグといった感がある。1981年完成の作品とのことだが、これまで聴いた(聴かされた?)彼の作品の中では、最も魅力的な曲ではないかと思う。
 しかも今夜の演奏は、あの名手リチャード・ストルツマンだった。彼の瑞々しく美しい、緊迫感に溢れたパーフェクトなソロが、この協奏曲をどれだけ充実の作品にしてくれたことだろう・・・・言っては何だが、彼のソロでなければ、これほど良い曲だと思えなかったかもしれぬ(失礼)。

 最後は、あのヘンク・デ・フリーヘル編曲による、オーケストラだけの、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。前奏曲から「愛の死」まで、第2幕の2重唱その他いろいろな個所の音楽を集め、少し手を加えて編曲したりして、要領よく接続した作品。
 原曲を熟知しているワグネリアンにとっては、おなじみの場面の音楽が次々に出て来て、なるほどここへ繋がったか、と楽しみの尽きない曲だが、そうでもない聴き手にとっては、このだらだらと(?)休みなく続く「まとまりのない」63分もの音楽はどのように感じられるのか、時々心配になってしまう。

コメント

 東条先生のおっしゃるがごとく、後半のワーグナーには、うとうとしてしまう間がありました。ビオラのソロ鈴木さん?の音色や、オーボエには、目が覚めました。トリスタンとイゾルデを観てないと、苦戦ですね。
オーケストラの面白さは、ウェーバーが一番でした。出だしも終わりも、美しかった。
23日の公演でしたが、ブラーボが出てましたよ。
帰り道、演奏の順序を逆にできなかったものかと、思いながら帰りました。
 スクロヴァチェフスキ氏の作曲も、初めて聴きましたが、こんな辛口の切り込みをする方なのかと、びっくり。意外にシニカルな。でも、ウェーバーからワーグナーへの間に、入れておきたかった音質なのでしょうか。両者とは全く異質なこの表現で、感受する時と空間が広がりました。

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