2020-05

9・22(土)三ツ橋敬子指揮日本フィルハーモニー交響楽団

   横浜みなとみらいホール  6時

 こちらも、ほぼ満席状態だ。日本フィルの横浜定期を三ツ橋敬子が指揮して、ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ソリストは中村紘子)、交響曲第5番「運命」というプログラム。やや前の方、上手寄りの席で聴く。

 彼女の指揮、昨年6月の東京フィルとのベートーヴェンの「英雄」では、すこぶる歯切れのいいリズム感で、エネルギッシュに押していた。それに対し、9月のシティ・フィルとのブラームスでは、一転して重厚な表現となっていた。
 それゆえ今日のベートーヴェンは前者のスタイルかと予想したが、案に相違して重心の低い、厚みのあるたっぷりとした響きで堂々と押して行く演奏である。

 このあたり、作品へのアプローチの違いか、オケとの相性によるものか、あるいは彼女の音楽のスタイルに変化が生じて来たのか、よくわからない。が、とにかくこの日本フィルから、随分柔らかい、ふくらみのある音を引き出すものだと感心させられたのはたしかである。
 序曲も協奏曲も、最強奏の個所にさえ余裕を持たせた音量であり、本当の爆発は「運命」まで取って置く――という意図なのかとも思ったが、その「第5番」においても節度と均衡は見事に保たれていた。
 「5番」の第1楽章再現部における第2主題が、これほど叙情的に美しく演奏された例を、私はこれまで聴いたことがない。

 とはいえ、音楽の力感が不足しているわけではない。第3楽章に入った途端、音楽の風格がみるみる増して来たのには、思わず居住まいを正したほどだった。
 しかも、第4楽章冒頭の第1主題に入る直前の、ピアニッシモのブリッジ・パッセージにおける強い緊迫感はどうだろう。クレッシェンドの呼吸もきわめて好い。若い指揮者がここまでやるか、と驚かされたほどである。再現部直前の個所でも同様の良さが聴かれた。
 全体に衒いの全くない、イン・テンポの、デュナミークの対比などにも殊更の誇張のないストレートな演奏だが、細部には数々の個性的な解釈が溢れている。やはり、並々ならぬ才能を備えた指揮者であろう。

 日本フィルは、本当にいい音を出していた。落ち着いた風格とふくらみが、演奏に満ち溢れている。今日のリーダー(コンサートミストレス)は江口有香。
 

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