2019-08

9・22(土)トレヴァー・ピノック指揮紀尾井シンフォニエッタ東京

    紀尾井ホール  2時

 9年ほど前までピリオド楽器のオーケストラ「イングリッシュ・コンサート」の創立者・指揮者として君臨し、近年はフリーで活躍する英国生れのトレヴァー・ピノック。
 彼が「紀尾井シンフォニエッタ東京」に客演するのは8年ぶりとのこと。実は私も、彼の指揮をナマで聴くのは久しぶりだ。

 ピノック、まだ66歳。以前に変らぬダンディな容姿、優雅な身振りの指揮。だが彼が引き出す音楽は、昔ながらのシャープで瑞々しい感性に満ちており、爽快で快い。
 この人は、アーノンクールやパーヴォ・ヤルヴィや、あるいはその亜流(?)のように、曲想の変化を大掛かりに誇張して聴かせる指揮者ではない。テンポをことさら大幅に変動させたりする指揮者でもない。だがデュナミークの対比を巧みに強調し、作品に起伏の大きな造形性を注入する点では、非常に個性的なものがある。

 指揮した曲はすべてモーツァルトの作品で、交響曲第36番「リンツ」、クラリネット協奏曲、交響曲第39番K.543の3曲。すべて緊張感の漲った、些かも緩みのない構築で推し進める見事な演奏だ。
 特に協奏曲で聞かせた、強弱の対比の綿密さは面白かった。ほとんどロマンティシズムといってもいいような――ppppと表現してもいいくらいの極端な最弱音(第2楽章)と、緊張が突然解決する瞬間の決然たるff(に等しい音量)とが、見事なコントラストをつくる。これはピノックの得意わざの一つだ。録音では絶対汲み取れない特徴で、ナマのステージの空間的な響きを伴ってこそ、初めて体験できる衝撃なのである。

 パトリック・メッシーナ(フランス国立管首席)のソロはイマイチだったけれども、ピノックの雄弁さと、それに応える腕利きの集団「紀尾井シンフォニエッタ東京」(今日のコンマスは長原幸太)の張りのある密度の濃い演奏で、大いに愉しめたコンサートであった。ホールは満席の盛況。

 終演は4時ちょうど。クルマで横浜に向かう。次の演奏会場みなとみらいホールまで、door to doorで1時間そこそこだ。流れのいい首都高をのんびり走る気分は最高。

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