2020-04

9・1(土)東京芸術劇場コンサートホール リニューアルオープン記念演奏会
下野竜也指揮読売日本交響楽団の「復活」

  東京芸術劇場コンサートホール  3時

 建物内部全体がリニューアルされたようである。
 地下鉄の通路から入った地下1階からして、雰囲気が明るくなったなと驚く。1階の広場が――お握り屋はちゃんと残っている――見違えるような景観になったのは、エスカレーターが中央からの5階直行型でなく、2階の踊り場を経由して壁側を昇る形に変えられたからだろう。喩えれば、今まで「東京都」的だった雰囲気が、「東急」的雰囲気になったというか。

 ホールのホワイエも、造作としては基本的に同じだが、マットの色が変わったりして、だいぶ明るくなった。コーヒー・コーナーのつくりやメニューは、大体以前と似たようなもの。エレベーターも自由に使えるようになった。2階席のトイレは、便器の種類は同じだが(!)、洗面台は広く明るくなった。2階ロビーの外部に面したガラス窓は何故か半透明になり、街に霧がかかったように見える。

 ――という具合に、物珍し気にキョロキョロしながらホール内に入れば、壁面は色も景観も大幅に変り、やや物々しく、やや重厚な感じになった。2階席センターに座ったが、椅子は以前のそれに比べると大幅に改善され、座り心地も格段に良くなった――ただ、シートの前後の長さが何となく少し短くなったような気もするのだが、如何?

 記念すべきその最初の演奏会は、「復活」である。東京音楽大学合唱団と、ソリストとして小川里美(S)および清水華澄(Ms)が協演。

 リニューアルが行なわれれば、必ずアコースティックが変る。第一に気になるのがそれだが、聴き慣れた2階正面最前列の位置からの印象によれば、ステージがほんの僅か客席側にせり出した構造に変えられたせいもあってか、音が非常にリアルで生々しい響きになり、ドライで硬めの、やや刺激的なものになった感がある。
 ただ注意すべきは、今回はかなり大編成の合唱団が最初からオーケストラの背後に並んでいたため、音が吸われた可能性もあるということだ。それに、ホールというものは、竣工やリニューアルのあとは、響きが馴染んで柔らかい音になるまで数年かかるもの、と相場が決っている。一つや二つの演奏会を聞いて判断すべきではない。

 演奏だが、下野竜也の今日の指揮は、冷静、正確、端然とした音楽づくりであった。それは極めて厳めしく立派で、音楽の骨格を余すところなく顕わにしているのは確かなのだが、――かように狂気性や破綻性を一切排除したマーラーの交響曲の演奏は、果たしてこの作曲家の真実の姿を伝え得るものであるかどうか? 私には些か共感しかねるものがある。

 また、いかにマーラーが第1楽章のあとには5分間の休みを置け、と指示しているとはいえ、指揮者は指揮台に立ったまま、舞台も客席もシーンとしたまま――その間に2人のソリストや若干の楽員の入場があり、チューニングも一応あったけれども――ただ黙りこくって正確に5分間待ち続けているのは、何とも堅苦しいし、だいいち、気分がだれてしまう。形だけの指示遵守は、無意味ではなかろうか。
 なお、ソリストは2人とも好演で、特に清水華澄の落ち着いた張りのあるソロは聴き応えがあった(アリアを歌うように身体を動かすのだけは自制した方がよいのでは?)。

 演奏中の客席の冷房は、明らかに効き過ぎだ。背中から足から、冷風が吹き付けて来るのには閉口した。レジデンツホフの悪夢が蘇る。身体中冷えまくって、帰りがけにトイレへ寄ったら、何と延々、長蛇の列になっていた。ロビーで、ある女性が「早く暖かい場所に行きたいわ」と話していた。
 降りのエスカレーターに乗ろうとしたら、2基のうち1基が動かずに、群集が大渋滞している。ガードマンらしき人が、「ただいま定員オーバーのため片方が動かなくなっております」と、理解不能な説明をしていた。エスカレーターに定員なんてあるのかしらん? リニューアル直後はいろんなことがあるようである。しかし、緊急の場合の対処だけはしておいてもらわないといけない。

コメント

マーラー「復活」(9月1日)

2階C列で鑑賞。

【演奏】
オーケストラの演奏は素晴らしい。しかし、個性はもっと出ても良い…。東条さんのコメントの通り、キッチリ、カッチリ演奏しました…という感じ。情景があまり浮かばなかったのは残念。
第1楽章の後の長時間休憩は間が抜けました(私は意味が分かっていませんでした。どうしたのかなぁと思ったまま)。
清水華澄の歌は良かったですね。彼女の歌のところはもう1回聴きたいです。
22年間に日本人オーケストラ、歌手はうまくなった…との感慨あり。満席の公演ということも感慨深かったです。22年前を思い出すと、シノーポリなら無批判にありがたがるが、日本人演奏ならまず批判的という時代。それとは今は違う時代にいるという印象。

【音響】
東京芸術劇場にはオープン当初はよく行っていました。最近はあまり行っていなかったので改装前後の正確な比較はできませんが、この日の公演は冒頭の低音弦の響きからして私は気に入りました。
サントリーホールは(当初はそうでもなかったですが)、昨今は響き過ぎて音が混ざり過ぎる印象。
それと比べると9月1日に聴いた東京芸術劇場は非常に音がクリアで大編成のマーラーには向いていた気がします。もう少し混ざり合っても良いかなという気はしますがサントリーホール程混ざらなくて良いと思います。この音響ならまた聴きたいとの印象。

【椅子】
中央が丸く高くなっているクッションスタイル。ホテルのロビーの椅子としては良いかも知れませんが長時間座る椅子としては果たして正しいのかどうか。お尻の座りが悪いので結構多くの人がゴソゴソしていました。新幹線(一般席)の椅子のようにお尻を包み込むスタイルが長時間、身動きさせないためには良いと思います。
椅子について更に大きな問題は、揺れです。何人も離れた席の人が少し動くだけで私の席も大きく揺れました。隣の人が少し動いても揺れます。上演中に身動きをしない人ばかりではないので集中出来ずに困りました。
専門家が万難を排して導入したはずなのに、どうしてこういうことが起きるのか不思議。税金に配慮しながら苦労された結果かもしれませんが、コンサートホールの椅子としてはもう少し慎重に選んで頂いても良かったのではないかと感じます。

【空調】
東条さんの空調についてのコメントは同感でした。
空調が入ったり切れたりしており、入った時は寒過ぎ。開場当時はこういう空調は普通だったと思いますが、22年後もこんな空調しか設定できなかったのでしょうか。寒さによる派生的な問題は、女性などを中心に上演中にショールを出し、ショールを掛け…と作業が視界に入るし当然音がすることです。また、(この日そうだった訳ではありませんが)逆に空調を効かせないようにしようとすると、上演中に扇子や団扇を使う人がいるのでこれも困ります。終始適温である環境を期待したいです。

【トイレ】
コンサートホール外のトイレや地下のトイレは昔のまま。
22年振りならこういうところも一緒に替えても税金の無駄使いにはならないと思うのですが、地下のトイレに入ったところ、その個室の便座は2か所が割れていました。体重の重い人が乗ったらそれを機に壊れます。
「安全」が重要なら最低限、複数個所割れたような便座くらいは替えて欲しいですね。この改修の機会を逃すと簡単には替えられないのではないか…と残念です。

【エスカレーター】
コンサートが終わったらうまく誘導して早く帰らせて欲しいです。なかなか降りれず…。皆さんは東京スタイル(右側を空ける)を律儀に守っていたような気がしますが、こういう場面では間違ったマナーなのでは?

【ボックス・オフィス】
受付と兼ねており、先に来た人の対応が後になるなど問題あり。改善して欲しいです。

素直に聴けた演奏

東京芸術劇場のリニューアルオープンにマーラーの復活。楽しみにしていた演奏のひとつ。まず、ホールは、響くようになったが、響かない。音が前に出るよになったが、音の粒が際立つ。先生のご指摘のとおり、なじむには時間がかかりそう。ただ、管楽器の音色、艶は、以前よりも数段改善されたように感じます。

 演奏は、ある意味、下野さんらしくない、ストレートな演奏で、好演だったと思います。多少、生真面目さから、単調な点もありましたが、最終楽章に向けた盛り上がりはよかったのでは。コーラスもよくがんばっていました。最近、ブルックナーを演奏する機会の多い読響なのでしょうか、時としてブルックナーの荘厳的な音の重なりを感じるところも随所に見受けられたのは気のせいでしょうか。最近、富に重厚さ加え明瞭さが増したなかで、一味利かせたマーラーでした。

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