2024-03

8・23(木)サイトウ・キネン・フェスティバル松本2012
ダニエル・ハーディング指揮サイトウ・キネン・オーケストラ

   キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 7時

 人気のハーディングがSKFに初登場、シューベルトの「第3交響曲」と、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」を指揮した。
 彼はタングルウッドで小澤征爾に学んだことがあり(相当やんちゃな生徒だったと小澤は語る)、さらに小澤が育てた新日本フィルとも今や深い関わりを持つ指揮者でもある。したがってこの音楽祭に登場するのも必然的な成り行きだったであろう。

 期待に応えてハーディングさまは、ツワモノぞろいのSKOから、今までこのオケが出したことのないような響きを引き出した。それは精妙に構築された演奏というよりはむしろ、SKOが持つエネルギーを久しぶりに伸び伸びと解放したような演奏、と言ったらいいか。

 「アルプス交響曲」では、舞台にあふれんばかりに詰め込んだ(?)大編成オーケストラを存分に躍動させ、「頂上」と「嵐の中の下山」の個所ではそれこそホールも崩れ落ちんばかりの大音響を轟かせた。
 おそらくSKF20年の歴史において、このホールでのコンサートで、SKOがこれほど「大きな音を出した」ことはなかったはずである。曲が曲だから、そのようなスペクタクル性もよろしかろう。楽員サンたちは、さぞ気持よかったのではなかろうか。

 ハーディングは「登山」から「下山」までの部分をきわめて速いテンポで、標題性にはあまり拘らないという調子で押しに押した。全曲最後の和音がほとんどメゾ・フォルテの音量で結ばれたのは唐突な感を与え(スコアでは弦はp、木管はpp、金管はppまたはppp)、納得が行かなかったけれども・・・・・。
 ラデク・バボラクをトップとするホルン・セクションは素晴らしい。また角笛のバンダ(ホルン12、トランペット・トロンボーン各2)もおそろしく上手いので驚いたが、聞けば小澤塾オーケストラのメンバーである由。

 私自身はしかし、前半のシューベルトの「第3交響曲」の演奏の方がむしろ面白かった。これにも解放感が横溢していて、特に第4楽章ではハーディングの煽りに煽ったスピード感とエネルギー感が噴出していたが、いっぽう第1楽章にはハーディングらしい細かい構築と凝った表情とが垣間見られたし、何より音楽が常に「飛び跳ね」て活気に満ちていたのが快かったのである。

 エネルギーを解放した演奏だったから良いという意味でもないし、演奏ももう少し引き締まっていた方がいいとは思うけれども、とにかく近年のSKFの「コンサート」に客演した指揮者の中では、このハーディングは、最も成功した存在と言えたのではないか。ここ何年か続いた日本人若手指揮者に替わる久しぶりの「外国人大物指揮者」に、SKOが敬意を示したのかもしれないが・・・・。
 これは、善し悪しはともかく、SKFの今後の方向を考える上での材料の一つになるのかもしれない。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/1456-ccf9dcb1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中