2019-05

7・25(水)佐渡裕プロデュース プッチーニ:「トスカ」

  兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール  2時

 久しぶりに西宮の兵庫県芸術文化センターを訪れる。阪急電車の西宮北口の南口は、来るたびに大きな建物が建ち、駅からの回廊も整備され増設されているように見える。ぼんやり歩いていると、とんでもない方面に向かっていることに気がついて慌てたりする。

 8~9回の公演すべてを満席にすることで全国に名を轟かせるこのホール売り物の、おなじみ佐渡裕プロデュースによるオペラ。
 今回の「トスカ」(28日までの8回公演)も「やっぱり完売?」と訊いたら、事業部のNさんが胸を張って「はい、完売です」と答えた。凄いものである。
 全公演がマチネーというのも、好評を呼ぶ原因の一つらしい。半分以上を占める女性客にとっては、帰りが夜遅くになる公演時間は苦手の由。勤め客は土日の公演を利用するから支障はない、という話も聞いた。今日も文字通り満杯、補助席ズラリという盛況である。

 今回の公演は、主役陣を外人組と邦人組に分けてのダブルキャストだ。
 私の方は、並河寿美(歌姫トスカ)、福井敬(画家カヴァラドッシ)、斉木健詞(警視総監スカルピア)、大沼徹(逃亡国事犯アンジェロッティ)らの主役陣が聴きたくて、今日の公演を選んで出かけた次第である。

 並河&福井のコンビは予想通り力感充分、第1幕では両者ともヴィブラートがちょっと強いかな、と感じさせたりしたが、第2幕以降は劇的迫力に富む歌唱を聴かせてくれた。
 並河はつい最近「さまよえるオランダ人」のゼンタ役を聴いたばかりだが、こちらトスカの方が伸び伸びと歌えているという印象を受けた(ご本人もそういう意味のことを語っていた)。
 福井は第2幕、「Vittoria!Vittoria!」をクライマックスとする壮絶な劇的表現が、全曲中最高の出来。この種の悲劇的でドラマティックな場面での緊迫感豊かな歌唱にかけては、日本人歌手の中でも彼の右に出る人はいないだろう。

 斉木は押し出しの良さを生かしてのスカルピア役だが、悪役としてはもう少し歌唱にアクの強さとメリハリが欲しい。トスカを襲う肝心な場面で、高音域を決められなかったのも惜しい。
 先日のオランダ人ですばらしい出来を聴かせた大沼は、今回は出番の少ない役柄だったので、本領発揮というところまでは行かなかったろう。
 佐渡裕は、予想外に抑制した音楽づくりというか、ヴェリズモ・オペラの扇情的な迫力をむしろサラリとかわして、沈潜的な個所ではテンポも落とし、叙情的な色合いを強くしていたようであった。兵庫芸術文化センター管弦楽団もあまりガンガン鳴ることはなく、演奏も手堅い。ただ今日は、第3幕冒頭での弦のソロが、何ともお粗末でいただけなかった。

 演出はダニエレ・アバド。先日の東京での「ナブッコ」と同様、凡庸極まる演出で、締まりのないこと夥しい。この人は所詮、この程度の人なのだろう。この演出がもう少しちゃんとしていたら、福井も並河も斉木も更に生き生きした舞台を創れたろうし、スカルピア刺殺の場も、大詰めのカタストローフも、もっとドラマティックな迫力が出たはずである。

 むしろルイジ・ペレゴのモダンな舞台装置が、シンプルながらなかなか洒落ていた。中央に円形の回転舞台を置き、これが第2幕では白色の冷たい光に照らされたスカルピアの居間となり、第3幕では大天使の像のある屋上場面となる。
 これはトリノで製作されたものだそうで、完全に今回の上演のためのオリジナルなものとのことである。独自にこれだけの水準の舞台装置を製作するとは、たいしたものだ。国内各地の上演にレンタルすれば喜ばれるのでは?

 休憩2回を挟み、4時45分終演。6時過ぎの新幹線で東京に引返す。

コメント

トスカ・佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2012(7月21日)

満席。まず、冒頭の指揮者登場からまず強い驚きがありました。観客全員が、「我らの佐渡裕に全幅の信頼を置いている」かのように熱気を込めて、かつ心を揃えて拍手で迎えていました。公演が始まる前からポピュラーコンサートのカーテンコールでの手拍子に近い拍手です。市民とオーケストラ、劇場の関係として理想の姿ではないでしょうか。

オーケストラは著名アーティストを含め補強され、演奏は非常に充実。伴奏に徹しつつ上品な演奏だと感じました。私が鑑賞した日は第3幕のチェロ重奏も非常に印象的な素晴らしい演奏でした。

歌手は第1キャストの外人バージョン。トスカ役のヴァシレヴァは第1幕では硬かったですが、第2幕以降大変良かったです。グリムズレイは美しいスカルピアでした。しかし、個人的好みとしてはもう少し毒があっても良い気がしました。演出上、第1幕のテ・デウムではスカルピアが階段の高い位置、しかも前面に出て深く祈る姿が強調されますが、「策士だが信心深い」スカルピアとして描かれていました。カヴァラドッシ役のアランカムはこれからの人ですね。絶対的に良かったのは「ヴィクトリア、ヴィクトリア」のところくらいでした。
終始、「カヴァラドッシは恐らくセカンドキャストの方が良いのではないか」と思いながら聞きました。今回は外国人キャストを聴くべきか日本人キャストを聴くべきかと悩んで結果的に外国人キャストとしましたが、悩む程に日本人歌手の魅力が高まっているということだと思います。

アバドの演出作品を観るのは2回目。
これは演出と言うより、美術家も含めて良いチームの仕事の勝利という印象でした。特に舞台美術は独特で良かったです。この作品では映像が多用されますが効果的だったりそうでなかったりという印象。第1幕は装置との関係で全ての席から良く見える訳ではないため、舞台の成り行きに集中しているうちにころころと映像が変わるものの、何を示しているのか見えない…というところもありました。第2幕は巨大な鏡が効果的であって、映像の使用は控え目。第3幕ではサンタンジェロ城の屋上と空の映像が流れるのですが、モノクロの汚れのある古い映像・あるいは古びて見せる映像がゆらゆらと揺れるので非常に精神的によくない…という気がしました。

8回のオペラ公演を満席に出来るのは日本中で佐渡裕さんしかいないのではないか…とは皆さん共通のご意見だと思います。佐渡さん、劇場、兵庫県内の関係者の努力に敬服します。佐渡裕芸術監督プロデュースオペラのプログラムは全員に対する無料配布。このプログラムに「オペラを楽しむエチケット」として「上演中のおしゃべり」「物音」「セキをするときはハンカチで口元を抑える」「チラシや傘は足元に」他についてキッチリ書いてあり、観客を育てているのも良いところ。これに「拍手は余韻を持って」との記述が入っているとなお良いですが…。

兵庫県立劇術文化センターのKOBELCO大ホールは客席そのものは行く度に魅力を感じます。しかし、これだけ敷地がゆったりしているのにロビーが狭いのは残念なところ。

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