2019-08

7・14(土)ミュンヘン・オペラ・フェスティヴァル
    ジョイス・ディドナート リーダーアーベント

   プリンツレゲンテン劇場  8時

 今年はバイロイトに行かないので、せめてこの、バイロイト祝祭劇場そっくりの内装を備えたプリンツレゲンテン劇場で気分的な埋め合わせを――というわけでもないが、暫しホール内を見回していると、見れば見るほどあのバイロイトが思い出され、何となくしんみりと物思いに耽ってしまう。
 会場内のカビ臭い香りまで似ているから面白い。

 今回の席は、何と最前列(やや上手寄り)だった。幸いステージが低めにセットされているので、手を伸ばせば届くくらいの位置にいる演奏者でも、聴感上のバランスが不自然になるというほどでもない。むしろアットホームな雰囲気で愉しめた。

 ジョイス・ディドナートは、前述の通り水曜日の「ラ・チェネレントラ」で具合が悪かったわけだが、今夜はトークを交え(きれいな声で話す)、自ら盛んにそれをネタにしていた。
 「今夜は、悪いお知らせと良いお知らせがあります。まず悪いお知らせは、今週の初めに喉の具合を悪くしまったことです。良いお知らせは、しかし私は今ここにいる、ということです」(聴衆大拍手)。

 第2部の最初にも、「大丈夫です。まだ私はここにいます」と、両手の親指を立ててみせるといった具合だったし、アンコールの際にも「ロッシーニの(何か)を歌いたかったんですけどごめんなさい。まだそこまではちょっとここが」と喉の下を押さえながら言っていたくらいだから、やはり本当に「だましだまし」歌っていたのだろう。

 しかし、そんなことを全く感じさせない、美しく伸びのある声に聞こえた。
 この人の歌には、聴き手を快い、幸せな気持に引き込んでしまうものがある。それさえあれば、充分だ。

 プログラムは、ヴィヴァルディのオペラ「テルモドンテのエルコレ」からのイッポリタのアリア2曲で開始され、そのあとはフォーレの「5つのヴェネツィアの歌」、ロッシーニの「老いの過ち」から「競艇前・中・後(3曲)のアンゾレタ」、シューベルトの「ゴンドラ乗り」、シューマンの「2つのヴェネツィアの歌」、マイケル・ヘッド(米)の「3つのヴェニスの歌」、レイナルド・アーンの「ヴェネツィア」と続いた。

 大部分は彼女のCD「ヴェネツィアの旅」(ウィグモアホール・ライヴ)に入っている曲で、何かCDのプロモーション・コンサートという雰囲気もないでもないが、とにかく一つのテーマに基づいたプログラミングであり、説得性もある。

 彼女はアメリカのカンサス出身である。今夜のトークでもそこでの少女時代の思い出などを語っていたが、アンコールの最後に「キャンサスといえばこの歌を」と言って、ハロルド・アーレンの「虹の彼方」をしみじみと歌ってくれた。そういえばあの映画「オズの魔法使」のヒロイン、ドロシーは、カンサスの農場の少女でしたねえ。
 それにしてもこの歌、ミュンヘンの古式ゆかしいプリンツレゲンテン劇場なんかで聴くと、妙に心に染みて来る。
 ピアノはダヴィット・ツォーベル。
 10時終演。

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