2017-10

7・12(木)ミュンヘン・オペラ・フェスティヴァル ロッシーニ:「ラ・チェネレントラ」

   バイエルン州立歌劇場  7時

 「指環」の中休みの日に、全く異なった傾向のオペラを観たり、コンサートを聴いたりするのは、いい気分転換になる。

 筋金入りのワグネリアンを気取る私でも、ワーグナーばかり毎日聴き続けるのは、あまり好きじゃない。
 だからバイロイトでワーグナーばかり7本観ていると、途中でやたらモーツァルトやシューベルトを聴きたくなってしまう。以前ベルリン・フェストターゲで、バレンボイム指揮とクプファー演出の「ワーグナー10連発」を観た時には、その間にR・シュトラウスの「エレクトラ」やヴェルディの「リゴレット」(ノイエンフェルスのとんでもない演出)や、ブラームスの交響曲コンサートやバロックコンサートを交えていたので、気分的にも全く疲れず、毎日を非常に新鮮な気分で送ることができたのであった。――これじゃ「筋金入りのワグネリアン」とはとても言えんぞ、おこがましい、と叱られるかもしれないが。

 そこで今日は、ロッシーニの「チェネレントラ」(シンデレラ)。
 指揮はアントネッロ・アッレマンディ。演出・装置・衣装は、日本でも上演された懐かしいジャン=ピエール・ポネルのものである。ごくごくトラディショナルなスタイルの舞台と演出だが、何となくほのぼのとしていて、「意味など考えずに」気楽に観られるところが好い。

 タイトルロールを、このところ日の出の勢いにあるアメリカ出身のメゾ・ソプラノ、ジョイス・ディドナートが歌うのが目玉だった。
 ところが開演直前、今日は彼女が調子が悪いので了承されたい、というアナウンスがあり、客席は落胆の溜息に包まれる。事実、第1幕では最初のうち声が伸びず、細かいヴィブラートが多かったりして、どうなることかと思わせた。が、これはもちろん、第2幕最後のために調子を整え、声をセーヴしていたためもあるのだろう。
 その第2幕。聴かせどころのクライマックスのアリアは、やや慎重な雰囲気を感じさせたとはいえ、美しく輝かしく、しかも正確に歌われた。調子が良かろうと悪かろうと、これだけ歌ってくれれば、文句を言う方がどうかしている。

 姉娘クロリンダを、中村恵理が軽快に歌っていた。よく踊り、飛び跳ね、茶目っ気をいっぱいにあふれさせての好演である。彼女の欧州での活躍ぶりは、日本にはそれほど知られていないが、ドイツ最高峰の歌劇場でこれだけ歌い演じ、好評を受けている日本人歌手がいるというのは、嬉しいことだ。

 他に良かったのは、脇役だがアリドーロを歌ったアレクス・エスポジート。力強く説得力のあるバスで、この哲学者役を「黒幕」という地位にまで高めさせるのに成功していた。
 強欲親父のドン・マニフィコはアレッサンドロ・コルベッリが歌ったが、今回はちょっとおとなしかった(?)という印象。もう少しえげつない存在感を見せて欲しかったところだ。

 ただ、この日の舞台と演奏は――指揮とオーケストラも含めて――全体にあまり燃えない、躍動感と明るさにも不足した、何かルーティン的な雰囲気の出来に留まっていたのではなかろうか。最近ドン・ラミーロ王子をしばしば歌っているローレンス・ブラウンリーにしても同様で、破綻なく歌ってはいるが、どうしても華やかさに不足するのである。

 他に、次女ティスベにパオラ・ガルディーナ、従者ダンディーニにニコライ・ボルチェフ(この人は背が高くて見栄えはするが、歌はあまり上手くない)。
 30分の休憩を含め、演奏終了は10時17分。カーテンコールは盛大だった。

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