2019-11

2・11(月)鮫島有美子の「夕鶴」

  サントリーホール

 サントリーホールでの、セミ・ステージ上演。
 鮫島有美子はこの「夕鶴」で各地を巡演しており、今年はすでに昭和女子大人見記念講堂、なら100年会館、兵庫県立芸術文化センター、神奈川県民ホールで公演している。今月はさらに大宮ソニックシティ、豊田市コンサートホール、福島市音楽堂で公演がある由。当たり役として「夕鶴」を極めようとする彼女にふさわしいライフワークといえようか。

 セミ・ステージといえど、演出が栗山民也、美術が堀尾幸男、照明が勝柴次朗というベスト・メンバー。これは、2000年12月の新国立劇場のプロダクション(猛烈に雪を降らせたあの舞台)と同一の顔ぶれである。
 今回は舞台上の下手寄りにオーケストラ、上手廻りで奥の下手方向および上手袖方向へ白い通路の舞台という設定で、簡にして要を得た演出が行なわれていた。栗山の演出はあの時と同様、詩的な美しさと精妙なニュアンスにあふれていて、なかなか好い。

 鮫島のつうをはじめ、持木弘(与ひょう)、牧野正人(運ず)、池田直樹(惣ど)は演技も歌唱も良く、現田茂夫指揮する神奈川フィルも十八番といった演奏を聴かせた。
 だが惜しいことに、この会場がコンサート用アコースティックのサントリーホール。オーケストラは豊かな音になるけれど、声があまりによく響きすぎて、発音明晰だった持木以外、歌詞がほとんど判別できなかったのが残念であった(私の席は2階センター6列目)。P席やLA、RA席の全部、LBとRB席の半分を空席にしてあったため、いっそうよく響いたのだろう。「ホールオペラ」の時にはいつもうまく吸音処理が行なわれていたから、それを参考にすればよかったのに、と思う。

 それにしても、この團伊玖磨のオペラ「夕鶴」、オーケストラ・パートがプッチーニやレスピーギのそれに似すぎるとか何とか、昔はさんざん非難されたものだが、初演されてから半世紀も経つと、そんなことはどうでもいいような気になってしまう。今ではつくづく、よくできた作品だと思う。音楽上の作劇法ともいうべきものが、日本のオペラとしては例外的に優れていて、「もって行き方」が実に上手いのである。
 これはもちろん台本が良いからということもあるが、それがもともとオペラの台本ではなく木下順二の有名な戯曲であることは周知のとおり。しかし未だにこれを凌ぐ台本が日本のオペラ界に出現していないというのは、なんとも皮肉なことではある。

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