2017-11

5・16(水)飯守泰次郎指揮東京シティ・フィル ブルックナー「4番」

   東京オペラシティコンサートホール  7時

 東京シティ・フィルと、その桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎による新しいブルックナー交響曲ツィクルスは、毎シーズンに1回の割りで進められて行くという。
 今日はその第1回で、まず第4番「ロマンティック」が取り上げられた。

 これは疑いなく、新しいツィクルスの劈頭を飾るにふさわしい力演である。
 飯守の音楽づくりは、堅固な構築の中に、明確な形式感と均衡とを備え、素朴ながら毅然たる力と風格を漲らせだものだが、その一方で、ヒューマンな温かさをも感じさせる。近年ますます円熟の度を深めつつある飯守の本領が発揮された演奏ということができよう。

 第1楽章ではオーケストラに足を引っ張られたような気配もあって、激しい気魄こそ感じさせたものの、演奏そのものは少しまとまりに不足する感もなくはない。が、第1楽章コーダで全身全霊をこめた昂揚をつくり出すのに成功したあとは、オーケストラの不備をも乗り切って、すこぶる剛直なブルックナー像を打ち建てて行く。

 特に第3楽章は、私が最近ナマで聴いたこの曲の演奏の中でも、最も優れたものであったと言ってよい。デモーニッシュなエネルギー感は並外れて強烈だったし、それはトリオの牧歌的な美しさと絶妙な対比を為していた。
 フィナーレのコーダでも、テンポをぐっと落して、一段また一段と高みへ盛り上げて行く。その呼吸が見事。

 シティ・フィルも、ホルンには終始ハラハラしたけれど、とにかく渾身の大熱演であった。弦は14型編成ながら、量感に不足はない。その健闘は称えられていい。

 プログラムの前半には、モーツァルトの美しい「協奏交響曲変ホ長調K.364」がおかれていた。演奏会全体としては少し長いものになったが、飯守とシティ・フィルの演奏は美しく、温かい。
 ソリストはヴァイオリンのジェニファー・ギルバートと、ヴィオラのハーヴィ・デ・スーザ。この曲は得てしてヴァイオリンのみが映えて、ヴィオラはよほど上手くないと目立たなくなってしまうものだが、今回は両者とも爽やかな演奏を聴かせてくれた。

 ジェニファーは、あのNYフィル音楽監督アラン・ギルバートの妹さんである。既に日本にはおなじみの存在となっている名手だ。
 現在はフランス国立リヨン管弦楽団のコンサートミストレスの要職を務めるかたわら(?)、大野和士の肝煎りにより、同市で何とラーメン店(!)を経営し始めているそうである。知人のレコード・プロデューサーは、その店で彼女が作った美味しいギョウザを食べさせてもらったと、羨ましい話をしていた。

     ⇒音楽の友7月号 演奏会評

コメント

音楽の秘密

オケはあんなにミスをしているにも関わらずどうしてあれほど素晴らしい演奏になるのでしょう?おそらくそこに音楽の本質が隠されているように思います。

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