2020-04

1・27(金)ダニエル・ハーディング指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

    サントリーホール  7時15分

 前半にラルス・フォークトをソリストに迎えたチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を、後半にストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を置いたプログラム。つまりこれは、ハーディングのロシアもの――。

 チャイコフスキーでの演奏が、意外に面白かった。
 意外に、というのは、私がふだんからこの曲にあまり共感を抱いていなかったせいもあるが、今回のラルス・フォークトのアプローチは、この協奏曲のこれまでのイメージをかなり変えるものだったからだ。

 よくありがちの闘争的な、バリバリとぶっ叩く演奏ではない――もちろんff にはダイナミックな趣きはあるけれども、それとてさほど攻撃的な演奏ではない。
 そして、第1楽章でのいくつかのリリカルな個所などでは、テンポを極度に落し、神経を行き届かせた最弱音を美しく響かせるのだが、それはまるで、シューマンのピアノ曲のようなイメージさえ生んでいた――あたかもチャイコフスキーが、尊敬していたドイツ・ロマン派の先輩ロベルト・シューマンへのオマージュとして書いた音楽のようにさえ感じられたのである。

 「ピアノとオーケストラの決闘」とまで評されたことのあるこの協奏曲からこのようなイメージを引き出して見せたフォークトの感性は、確かに面白い。
 彼はいわゆるヴィルトゥオーゾ的なピアニストではないから、こういう解釈の方がぴったり来るだろう。
 第1楽章冒頭など、その和音の柔らかさに、一瞬オリジナル稿で始めたのかとさえ錯覚しそうになったくらいである。

 このフォークトの演奏に、ハーディング指揮の新日本フィルもよく合わせたが、いつもとは違うスタイルに少々勝手が違ったか、と思わせたところもないでもない。
 出だしからホルンの1本が音を外したのにはガクッと来たが(珍しいですね、こんな曲で)――先日のマーラーの「9番」の時といい、私が新日本フィルを聴きに行く時には、ホルンにはどうもツイていないのか――曲全体は叙情的なニュアンスを基本にまとまっていた。
 演奏時間も40分ほどかかっていたから、テンポはやはり遅い方である。

 「ペトルーシュカ」は、これも意外に整然とした音楽づくり。目まぐるしく移り変わる曲想を、イン・テンポのイメージで、スタティックに、整然と構築する。
 これは、ロシア・バレエの音楽というよりむしろ、のちの新古典主義時代の方向にやや顔を向けているストラヴィンスキーといったイメージだろうか。以前、ブーレーズがこういう傾向のアプローチを行なっていたことがあるが、あれよりはもっと軽く、明るい。新日本フィルも、この曲では調子を取り戻したようであった。
 なお、ラルス・フォークトがこの曲でも友情出演(?)のピアノを受け持っていた。

    音楽の友3月号 演奏会評

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