2020-05

12・26(月)大野和士指揮東京都交響楽団の「第9」

    サントリーホール  7時

 「第9」の前に、ブラームスの「アルト・ラプソディ」がおかれていた。
 この組み合わせが最良かどうかは別として、私はこの曲が大好きなので(特に第3部!)、実は楽しみにしていたのである。今回は、「第9」をも歌う小山由美(メゾ・ソプラノ)と東京オペラシンガーズが協演した。

 演奏が始まった瞬間から、都響は今日もいい音を出しているな、と感じる。都響を聴くのは今月に入ってこれが3度目だが、このところ、悉く快調な演奏である。
 大野和士の、この曲の叙情的な陰翳を直裁に浮彫りにした指揮もいい。小山由美の声は、この曲には少し明るいかなという感もあるのだが、それはこちらの好みに過ぎぬ。第2部までの暗鬱さと、第3部での愁眉を開くような感情との対比は、彼女の歌唱はよくそれらを伝えていたように思う。

 ベートーヴェンの「第9」では、天羽明惠(S)、市原多朗(T)、堀内康雄(B)が加わった。この独唱陣は、なかなか豪華な顔ぶれだ。
 東京オペラシンガーズはかなりの大編成だったが、響きに透徹した美しさがあって、これも爽快な歌唱を聴かせてくれた。

 そして大野と都響――弦楽器群にふわりとしたふくらみと拡がり感があるのは最近の都響の特徴だが、今日の演奏ではとりわけテュッティの際に内声部の交錯をあまりリアルに出すことなく、まろやかに一体となった響きになっていたのが目立った(これは、悲劇的な性格を持つ第1楽章では綺麗に聞こえ過ぎる感もあったが)。
 しかし、それでいながら第4楽章冒頭のレシタティーフにおけるように、チェロやコントラバスが前面に躍り出た時には、実に艶やかで抜けの良い音色を聞かせる。これがまた面白い魅力である。

 弦は16型で、木管も倍管(4本)編成を採っているので、量感は極めて豊かである。こういう「第9」も、久しぶりに聴くといいものだ。特に第3楽章の豊麗さ、第4楽章の昂揚感という点では、私は大編成の演奏の方に大きな魅力を感じている。もちろん、演奏によりけりだが――。

 大野和士の指揮も、強靭なエネルギーを備えたものだ。楽曲全体をバランスよく隙なく弛緩なく構築できる力量という点では、今やわが国随一であろう。いや、世界でも屈指ではないかとさえ思えるほどである。
 第4楽章のテンポは速めで、息もつかせぬほどの勢いで押す。終り近くのプレスト(ブライトコップ旧版ではプレスティシモ)の個所など、フルトヴェングラーもかくやの猛速で、オーケストラもコーラスも時に追いつけなくなるような感もあったが、この大曲の最後の忘我的熱狂は、やはりこういうテンポであって欲しいものである。

   モーストリー・クラシック3月号 公演レビュー

コメント

こんにちは

おっしゃる通り
都響、大野さんの熱演でいまだに忘れられないとともに
私の第九における基準の演奏となりました。
これよりも下なら、
演奏は悪いという。笑い

ベートーベンの曲を作る姿勢、あの曲の一音一音が丁寧に再現されたような気がしました。
本音言うと
どんな演奏でも
この曲は元が良いので楽しめるのですが、
ここまでの演奏されたなら、会場で死んでしまいました。

文化会館での演奏が今一つ評判が良くなかったので期待はあまりしなかったのですが、それはそれはすさまじい迫力でした。本当に言葉で言うならば
オケと合唱とソリストが一体となった瞬間の忘我を体験できたという感じです。終わって、静かになったときのサントリーホール(実際は拍手早かったですが)にいる喜びをかみしめたものです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1261-7c0e122b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

お知らせ

●2007年8月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年8月
2006年7月
2006年4月
2006年3月
2005年12月
2005年8月
2005年4月
2005年3月
2004年4月

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」