2019-07

12・26(月)オペラ映画「魔弾の射手」

   シネマート六本木試写室  3時半

 ウェーバーの名作「魔弾の射手」を、演出家イェンス・ノイベルト(ドレスデン生れ)が監督して製作した映画。
 ライブ・ビューイング式のものではなく、完全な映画のスタイルで作られ、音響効果もサラウンドになっているので迫力があり、なかなか面白い。

 この演出では、舞台が1813年のドレスデン――ナポレオン軍とプロシア軍とのドレスデン攻防戦直後の時代(諸国民戦争の直前)――に設定されているところに特徴があり、戦死者の散乱する光景があちこちに織り込まれている。主人公の「気の弱い青年軍人」マックスがこの戦争による心理的後遺症に陥っているという設定も、このオペラの演出としては異色のものだろう。

 特にこの作品におけるロマンティック・オペラの真髄ともいうべき場面――魔弾が製造される深夜の「狼谷」の場面では、累々たる戦死者の山が不気味な雰囲気を作り出す。少々気持の悪いところもあるけれど、オカルト的な情景と音響演出がさすが映画らしく効果満点で、こればかりはとても舞台の及ぶところではない。
 第3幕最終場面で、射撃競技の弊害を諌め、武力の無意味さを説きに現れる「森の隠者」が、うしろに農民を含む一般の家族たち――現在なら「一般国民たち」という存在だろう――を従えているあたりも、ノイベルトのメッセージを感じさせて、興味深い。

 出演はもちろん本職のオペラ歌手たち。エンヒェン役の新人レグラ・ミューレマン(初々しい)以外は、すべて錚々たるベテランばかり。
 ミヒャエル・フォッレが歌い演じる「悪狩人」カスパルよりも、ミヒャエル・ケーニヒ演じるマックスの方がよほど薄汚い悪人ヅラに見えたり、ルネ・パーペ演じる「森の隠者」が何か堂々として強そうだったり、という変わったところもあるけれど、とにかくみんな演技が巧い! 
 カメラワークはアップが多く、とりわけ狼谷でのフォッレとケーニヒは、音楽に合わせて激しく動き回るカメラに連続してアップで捉えられる。だが2人とも、それに堪え得る演技力の持主なのである。外国のオペラ歌手は本当に演技が巧い。日本の歌手たちも、見習っていただきたいものである。

 他に、フランツ・グルントヘーバーが領主オットカール役で、オラフ・ベーアが農夫キリアン役で健在なところを見せていた。「清純な少女」アガーテはユリアーネ・バンゼで、この人だけはちょっと表現力不足か?

 演奏は、ダニエル・ハーディング指揮のロンドン交響楽団。
 序曲の後半あたりにはテンポの誇張があって、またかと思わされたが、オペラ本体は珍しく率直ないいテンポで押していた。「狼谷の場面」など、極めて迫力ある演奏である。第3幕の「すみれ色の冠」「狩人の合唱」の2つの合唱曲は、いつ聞いてもいい曲だ(私の小学校時代には、これらは日本語の歌詞をつけて歌わされたものだが・・・・)。

 この映画で最も好ましいのは、原作の音楽が大切にされていることだ。この種の映画にありがちな、原曲を切り刻んだり順序を入れ替えたりということが、全くといっていいほど行われていない。したがって、原曲のよさを存分に味わうことができる。

 上映時間2時間24分。3月公開予定とのこと。

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