2020-05

12・10(土)山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団

   サントリーホール  2時

 ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、モーツァルトの交響曲第31番「パリ」、ベルクの「ルル」組曲、最後にラヴェルの「ラ・ヴァルス」というプログラム。

 最近いよいよ調子を上げている山田和樹のいろいろな側面が聴かれて、すこぶる興味深いコンサートだった。
 日本フィルも、先月のラザレフ指揮に続いて好調の水準を保った定期。これだけ豊麗な音を出す日本フィルは――先頃広上淳一が指揮した時にも聴けたものだが――数年前には考えられなかっただろう。

 最初の「牧神」は、柔らかく美しかったが、分厚い音で濃厚で、やや重々しい。官能美にもロマン派的な色合いを感じさせるというか。
 最後の「ラ・ヴァルス」にいたっては更に豪壮雄大で、ドイツ後期ロマン派的な、重厚な音詩となった。幕切れは雷鳴轟くがごとく、演奏効果は上々だが、フランスものとしては、さて・・・・? 
 だが解釈の問題は別として、若い山田和樹の意気込みを示すという点では、非常に興味深い演奏である。もし彼がフランスのオーケストラをこのように指揮したなら、あの国のオケ特有の個性が加味されて、明るい音色の豪華壮麗な演奏が創られるのではないかという気もする。

 その点、今日の演奏の中で最も印象深かったのは、「ルル」の組曲だ。
 これも20世紀の近代音楽としての尖った演奏ではなく、既にドイツ後期ロマン派の流れを汲む古典に属する作品としての響きにあふれた演奏だったが、極めてスケールが大きく、特に大詰めの場面の音楽には魔性的な不気味さ、破滅的な力感が聴き取れて、山田の力量を感じさせる。

 声楽ソリストとして林正子が協演、ルルの歌と幕切れのゲシュヴィッツ伯爵令嬢の歌とを受け持った。
 ただ、後者はもともと伯爵令嬢の断末魔の歌ともいうべきものなのだから、あのような派手な歌い方でなく、もっと悲劇的かつ詠嘆的に歌われるべきだと思うのだが、どうだろう? 
 彼女は今日が誕生日だったそうで、カーテンコールの時には山田和樹から花束が贈られ、客席もろとも盛り上がっていた。

 2曲目のモーツァルトも、ノン・ヴィブラート奏法と、大きめの編成による厚い音と、エネルギー感のある演奏により、特に第1楽章では押しの強い華やかさが出ていて、楽しめた。
 この指揮者は、これまで私が聴いた演奏の中では、やはりドイツ系の壮大な音楽の方に強みを発揮するように思われるが――即断は禁物。

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