2020-05

12・7(水)ヤクブ・フルシャ指揮東京都交響楽団

   サントリーホール  7時

 ただ1回の演奏会ではもったいないくらいだ。

 首席客演指揮者のヤクブ・フルシャがドヴォルジャークの「スターバト・マーテル」を振ったが、これが素晴しい出来。
 最初の滑り出しこそ少し生硬だったものの、次第に音楽がしっとりと温かくまとまり始め、中盤以降は今年の都響の定期の中でも屈指の演奏となって行った。

 転回点となったのは、合唱とオーケストラのみで演奏される第5曲あたりからだったろうか。第6曲以降は、端正なつくりの裡に柔らかく愛と悲しみを紡ぎ上げるといった演奏が展開され、ドヴォルジャークの音楽の美しさが背に迫るものを感じさせる。
 最後の第10曲、初めて出現する壮大な昂揚のあと、あたかも魂が静かに天に昇って行くかのような終結個所で、フルシャと都響が聴かせた演奏の――温かい安らぎと慰めに満たされた演奏の見事さ。この一瞬に、今夜の演奏のすべてが集約された、と言っていいかもしれない。

 もし第2回の演奏があったら、その時は冒頭から完璧な演奏が繰り広げられることは、間違いない。1回ではもったいない、と思わせられた所以である。

 フルシャはチェコ生れ、未だ30歳の若さだが、昨年12月定期でのマルティヌーの「第3交響曲」とといい、今回の「スターバト・マーテル」といい、素晴しい感性を持った指揮である。
 都響も、近年とみに好調さを示す弦を中心に、今回も良い響きの音楽を聴かせてくれた。嬉しい驚きは、久しぶりに聴いた晋友会合唱団(清水敬一指揮)の充実ぶり。チェコから招いた声楽ソリストたちよりも、むしろこちらの方が主役といってもいいほどの存在感を示していた。

 そのソリストたちというのは、シモナ・シャトゥロヴァー(ソプラノ)、ヤナ・ヴァリンゲロヴァー(メゾ・ソプラノ)、トマシュ・ユハース(テノール)、ペテル・ミクラーシュ(バス)。――このうち、テノールだけは、どうも情緒過多というか、聞かせどころの第6曲などでは「感極まった」スタイルの歌いぶりで(これは癖だろう)、一人だけ浮いた感があった。

 それにしても、都響がフルシャを首席客演指揮者に選んだのは卓見と言って然るべきだろう。惜しむらくは、都響を振りに来るのが年1回。次は来年12月のバルトークまで待たなくてはならぬ。
 せめて来年3月のプラハ・フィルハーモニア管との来日(プログラムが平凡なのが残念だが)を楽しみにするか。

      →モーストリークラシック3月号 公演レビュー

コメント

予習のために聞いた、RSRチャンネルのアーカイブから、Christian Zacharias指揮のローザンヌ室内管を聞いてから出かけました。
<悲しみの聖母>、いろんな作品の中でも、チェコもの独特のくすんだ音色<<柔らかく愛と悲しみを紡ぎ上げる>>、安心して聴くことができるなかなか聴けない良い演奏でした。

フルシャって、地味な出世街道を歩むんでしょうね。派手ではない、確実にポイントは押さえていくといった。都響から大きい音をより引き出せるようになることを期待しています。

感動的な演奏でした。家に帰って、また改めてローザンヌ室内管の演奏を聞いています。

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