2020-04

11・24(木)東京二期会 モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」

   日生劇場  6時半

 カロリーネ・グルーバーの演出だから、どうせただでは済むまいと思っていたが、予想通り、かなり捻りまくった「ドン・ジョヴァンニ」になった。

 これまで日本で上演した彼女の演出――二期会の「フィレンツェの悲劇」と「ジャンニ・スキッキ」の組み合わせ(2005年)は意外にストレートだったし、びわ湖ホールの「サロメ」(2008年)も「読み替え」でありながらストーリー的には至極解り易いものだったが、今回はいよいよ本性を現したという感か。

 「謎解き」には場数も修練も積んでいるつもりだけれど、正直言って今回のは、説明を聞かなければ意味が解らない個所が沢山ある。
 当てずっぽに解釈したところで「あなたの目は節穴でございますか」と言われるのがオチだから、もう少し時間をかけて考えてみることにする。

 雷鳴轟く嵐の夜に、ある大邸宅(さながら歴史の亡霊たちが住む永遠の愛欲の館という雰囲気)に紛れ込んで来た、ごく普通の若い男女――マゼットとツェルリーナが「奇怪な事件」に巻き込まれて行く冒頭シーンを見て、さてはこの現代人2人がドラマの中心に据えられ、その目から見た人物模様が描かれて行く設定なのかな、と大いに期待したのだが、そうではなかった。

 結局、ドン・ジョヴァンニが不死身であり、永遠に女たちを(男をも!)幻惑させ翻弄し続ける存在だというのは明らかだが、そのコンセプトをかように手の込んだ手法で描くには、歌手陣がもう少し経験を積み、舞台姿からしてキャラクターが滲み出て来るようなレベルにまでなっていないと、少々苦しいのではないか?

 宮本益光のジョヴァンニも「GTO」の反町隆史ばりのヨタった大熱演ではあったものの、演技のパターンが1種類だけなので、第2幕になると些か飽きて来る(その点、以前の二期会プロダクションの宮本亜門演出によるキムタク風演技の方が断然良かった)。

 他には、法王風騎士長の斉木健詞、現代風青年マゼットの近藤圭が気を吐いた。その他の人たちもよくやってはいたが、聞かせどころのアリアの歌唱には、もっと正確さが欲しい――。
 
 聴きものだったのは、沼尻竜典の指揮と、トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズの演奏だ。
 第2幕では演奏がやや散漫に聞こえたとはいえ、第1幕での完成度は見事なもので、弦の張り切った瑞々しさと、木管の透明なハーモニーが魅力であった。このところ続いた「ドン・ジョヴァンニ」を、音楽だけはやはり何度聴いてもいいものだと感じたのは、このコンビの演奏ゆえである。

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

東条先生、お疲れ様です。

グルーバーのドン・ジョヴァンニの記事、いま読み返して気づいたのですが…
先生もミステリ小説をお読みになるのですね。
いや、ドラマの方でしょうか?

ミステリ小説好きとして、ちょっとうれしくなりました。

このドン・ジョヴァンニは、琵琶湖湖畔で見る予定です。
なかなかのクセモノのようですが、こういう刺激的な上演がここ日本でも増えることは大歓迎です。

年輩の御婦人たちの「もう少し普通の演出のが見たいわねえ」には辟易してるクチなので…。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1238-398afa77
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」