2020-05

10・19(水)スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

    東京オペラシティコンサートホール  7時

 よりにもよって(おそらく)一番長い名前の指揮者と、一番長い名前のオーケストラが結びついた。
 
 これまで2度(2003年、2006年)来日しているザールブリュッケン放送響(1936年創立)と、カイザースラウテルンSWR管(1951年創立)が4年前に合併した結果、こういう寿限無みたいな長い名前になってしまったという(三菱東京UFJ銀行のようなものだ)。
 活字メディアや放送メディアは、苦労するだろう。
 今秋からの首席指揮者はカレル・マーク・チチョンという人で、おなじみスクロヴァチェフスキの方は今「首席客演指揮者」の由。

 合併により、両者のうちのどのくらいのメンバーが残留し、どのくらいが辞めたのかは定かでないが、とにかくかつてザールブリュッケン放送響として来日した時よりも、オーケストラ全体の技量的水準は上がっているようだ。
 いわゆるインターナショナルな響きを持つヴィルトゥオーゾ・オーケストラではないけれど、いい意味での「その町のオーケストラ」というような――ちょっとローカル的な雰囲気も残る手づくり的な個性が、不思議な親しみやすさを感じさせる。

 今年88歳になるスクロヴァチェフスキが、相変わらず若々しい。歩行もこの年齢にしては颯爽たるものだし、長大なプログラムを立ち続けたままで、しかも暗譜で指揮する。カーテンコールにも元気で応え、おまけに終演後には延々長蛇のファン相手にサイン会までするのだから凄い。

 もちろん、音楽づくりも若々しい。
 1曲目のモーツァルトの「ジュピター交響曲」も驚くほど引き締まった演奏で、第1音が鳴り出した途端に、ミスターS健在なり、という喜びが湧き上がったほどである。オーケストラから少し丸みのある柔らかい響きを引き出し、しかも剛直さを失わせることなく、緊迫感を保ち続けながら終楽章の頂点に向け楽曲を構築して行く。

 一方、ブルックナーの第4交響曲「ロマンティック」は、緩徐個所で時折音楽の密度が薄くなり、両端楽章で時に利かせるアッチェレランドの追い込みも以前より淡白な表情になった感もある(読売日響だったらこのへんはもっと自ら巧くやってみせるだろう)。しかし、大きな起伏を持たせつつ楽曲を見通しよく構築して行くスクロヴァチェフスキの手腕は、いつもながらのものだ。
 彼は、この曲でも頂点を終楽章に置き、そこでエネルギーを一気に解放する。金管群の音量も第4楽章に至るや突然2倍に達する、といった感である。

 大詰めの壮大な9小節間で、普通はトランペットなどにマスクされてしまうホルンの3連音符が微かながらはっきりと聞こえるあたりなど、いかにもスクロヴァチェフスキらしい緻密なバランス設計が示されていて、私は大いに気に入った。

 なお第4楽章第1主題群が頂点に達した個所で、スクロヴァチェフスキは「改訂版」から引用したシンバルを追加している。これは以前に録音したCDでも同様であった。全管弦楽が爆発する瞬間に一段と高くシンバルが打ち鳴らされる効果は――たとえブルックナーの原典楽譜にはなくても――何か胸のすくような趣があるだろう。

 アルプス山脈的な壮麗雄大さはないにしても、一種の生々しく人間くさい息づきのようなものが感じられる。それが、スクロヴァチェフスキの指揮するブルックナーなのである。

コメント

とても、いい演奏でした。
<<第4楽章>>に<<シンバルを追加>>しているのは、この指揮者の特徴なのだろうと思いながら聴きました。
若々しくて、安心してスポーティーなエネルギッシュな演奏なのに、好印象を持ちました。
<<ちょっとローカル的な雰囲気>>、洗練されない独特の土臭さもなく、おおらかな雰囲気。いいですね。

気持ちよく家路に帰りました。

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