2020-05

10・15(土)インゴ・メッツマッハー指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

    サントリーホール  2時

 メッツマッハー、新日本フィルへの2度目の客演指揮。
 昨年11月の初客演で指揮した「悲愴交響曲」は演奏が腑に落ちず、マーラーの第6番「悲劇的」でも強引さと強烈さに辟易させられたものだが、今日の演奏はそれに比べると遥かに多彩で、しかも一貫性が感じられ、納得が行くものであった。
 プログラムは、ベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番、アイヴズの「ニュー・イングランドの3つの場所」、ショスタコーヴィチの第5交響曲。

 メッツマッハーの指揮で特に強く印象付けられるのは、オーケストラの楽器のバランスづくりの巧みさと、鋭角的なリズムに支えられる引き締まった強固な構築性だ。
 それらは、「レオノーレ」では端整で正確で毅然とした音となり、次の「ニュー・イングランドの3つの場所」では、いろいろな旋律や動機を一緒に鳴り響かせるあのアイヴズ独特の管弦楽手法が鮮やかに整理されて再現されるという形になる。

 後者は、私はナマで聴いたのはこれが2回目だが、聞こえるべき楽器のパートがまさしく聞こえるように浮かび上がる今回の演奏を聴いて、今度こそこの曲の魅力が堪能できたような思いになった。
 本番がもう1回あれば、さらに明晰な構成の演奏になるのかもしれないが、これだけでも充分満足できる演奏である。

 ショスタコーヴィチの「5番」は、もともと私はあまり好きな曲ではないのだが、この指揮者ならどう料理してくれるだろうか、と、事前の興味は津々。
 実際の演奏は特に奇抜なところはなかったけれど、ここでもオーケストラの音色のバランスには細心の注意が払われ、緻密につくられた最弱音と強靭な轟音との対比が際立つ。鋭い音色とリズムを駆使し、全曲を凄まじい緊迫感で押し包むのは前回のマーラーの「6番」でも同様だったが、それは私を息苦しいほどの気持にさせることもある(一方ではある種の快感にもなるのだが)。

 メッツマッハーは、両端楽章のテンポを著しく遅めに採った。とりわけ第4楽章は遅いテンポで重々しく開始し、狂気じみたアッチェレランドを重ねることなく進み、最後の頂点でも遅いテンポを保持したまま激しい気魄のうちに結んでいた。このようなテンポの設定は、明らかにこの曲の悲劇的要素を浮き彫りにしているだろう。

 新日本フィルの演奏も、実に鮮やかだった。前回よりもメッツマッハーとの呼吸がより良く合うようになって来ているのだろう。ただ咆哮するだけでなく、いっそう細かいニュアンスを感じさせるようになっている。アルミンクやハーディング、メッツマッハーといった指揮者との協演で実績を重ねた新日本フィルは、こういう「現代傾向」指揮者相手に良さを聞かせるという点では、現在の日本のオケの中でおそらく第一の存在かもしれない。

    ⇒音楽の友12月号 演奏会評

コメント

運動選手には動体視力なる用語があるのですが。オケの場合に相当する用語が何なのか。
動体視力がとても良いオケと感じております。

 確かに、<<オーケストラの楽器のバランスづくりの巧みさ>>、僕もそう思います。
 しかし、曲目によっては<<聞こえるべき楽器のパートがまさしく聞こえるように浮かび上がる(今回の)演奏>>は、名曲(ブラ1)であればあるほど、誰もが親しんだ親しんでいる曲目ほど、一般聴衆の敷居高くなりやすい難点があります。
 また、<<オーケストラの音色のバランスには細心の注意が払われ、緻密につくられた>>ブラ1の4楽章、「あっ、こういう音の構造を浮かび上がらせたいんだ!!」と思う箇所が随所にあって、興味深いものであっても、一般聴衆の共感の得やすい演奏といえたか(?気味)!僕は、わかりませんとしかいえないようです。
 よって、少々、期待はずれのブラ1(土曜日の演奏)。
 そこで、やはりこの指揮者って、オペラ向けの指揮者なのかなって、やっぱり思ってしまいます。聞きたいのは、<無口な女>。管弦楽なら、ところがどっこい、ブルックナー。
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 20世紀(1900年代以降)の曲目以降、ばりばり、強そう。そういうものだと、もっと、理解されると思いますよ。総じて、求めているものが何か感覚が少し違う指揮者なのかとも。1993年の、N響と下準備で意思疎通の点何かあったと聞いているし。リハ中の気まずさの雰囲気。伝聞ですけど。
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  そういう意味で、<<今の日本のオーケストラで、新日本フィルは、こういう「現代傾向」指揮者相手に良さを聞かせるという点では、現在の日本のオケの中でおそらく第一の存在かもしれない。>>、管理人様と同感する部分かなり同一かも。




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