2019-05

9・2(金)山田和樹指揮セントラル愛知交響楽団

   三井住友海上しらかわホール(名古屋)  6時45分

 別に追っかけではないけれども、山田和樹が小編成(弦10・8・6・6・4)のオケをどのように制御して「未完成・英雄」を演奏するかを聴いてみたかったので、台風の前をかすめて名古屋まで往復。
 それに、セントラル愛知響をナマで聴くのも久しぶりだし、しらかわホールに行くのも十数年ぶりだし、ということもあって。

 編成の小さいオケだろうと、小さいホール(700席前後)だろうと、オーケストラをダイナミックに全力で響かせる、というのが、彼ニュー・ヤマカズの身上のようだ。
 シューベルトの「未完成交響曲」においても、ティンパニを豪打させ、トランペットを鋭く一閃させ、厚みのある音で壮大な音楽をつくる。この曲であれだけのフォルティシモを作るのは少々行き過ぎではないか、と感じられるところもあったが、セントラル愛知響がなかなか巧く鳴るので、これはこれで面白い、という気持にさせられる。

 このオーケストラ、今夜の低音域の力強さは立派なもので、特にコントラバスが4本でありながら明晰かつ清澄によく響く音を聴かせるのには感嘆させられた。「未完成」冒頭など、低弦群の確信に満ちた響きには、ハッとさせられるほど衝撃的なインパクトがあったのである。

 山田和樹の指揮も、先ごろ大編成の読響との演奏を聴いた時には、今日では珍しいロマン的なアプローチかな、と思った部分もあったのだが、今夜の小編成のセントラル愛知響との演奏を聴いて、その印象はかなり薄れた。
 ここでは、夢幻的な要素などからは遠く、むしろ切り立つような荒々しさと、敢えて言えば怒りの感情の爆発のごときものを感じてしまう。第2楽章の最後は、カタルシスというよりも、一つのドラマが思い切りよく終結した、といった雰囲気か。

 後半の「英雄交響曲」も、壮大志向の演奏である。デュナミークの対比は強烈で、叩きつける和音は、荒々しく鋭い。
 久しぶりでこういう雄大な気宇の演奏を聴いた気がする。当節の風潮からすれば反逆児的なスタイルの演奏ともいえるが、不思議な説得力を持つ演奏であり、聴き手はそれを時に斜めに見ながらも、何かを激しく意識させられてしまう、という心理に誘い込まれる。
 第2楽章最後は、すこぶる情感豊かに音楽が組み上げられていた。

 セントラル愛知響も大熱演だ。ヴァイオリン群には些か不安定なところが少なくなかったが、コントラバスはここでも見事な存在感を示していた。
 第2楽章第135小節からのホルンは、オリジナルの譜面通り3番ホルンが1人で吹いており、1小節ごとにフレーズが途切れるのが惜しかったものの、テュッティの中でのそのパワーは立派なものと言ってよかろう。

 第2楽章を除く3つの楽章でのエンディングの和音も、所謂「決めのいい」鳴り方だったが、全曲最後の和音(譜面では4分音符だが、事実上は2分音符ほどの長さを与えられていた)は、それが未だ完全に終らぬうちに騒々しくブラヴォーを絶叫した男によって破壊された。これは実に悪質極まる。

 なおプログラムの最初に演奏されたのは、野平一郎の「弦楽オーケストラのためのグリーティング・プレリュード」という佳品。
 「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」を音階として少しずつちらつかせ、点滅させつつ、最後にヴァイオリン・ソロがそのフシを完全な形で奏して種明かしするという仕組だが、有名なフシなのだから、プログラムの解説でネタバレさせないで置いた方が、謎解きとしては面白かったのではなかろうか。

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