2008-07

12・19(水)インバル指揮東京都交響楽団 マーラー「6番」

 サントリーホール

 ホールは楽器の一つであるという言葉のとおり、こちらのホールでは、音の質感や音色の多彩さがはっきりと浮かび上がってくる。そうした中で聴くエリアフ・インバルと東京都響のマーラーは、やはり独自の境地を示す優れた水準の演奏であった。

 2階正面で聴いた印象から言えば、都響の弦はもう少し鳴ってもいいのではないかという気もしたが、しかしその不思議に陰影を偏重した、くぐもった柔らかい響きは、おそらく意図的に創られたものだろうと思う。それゆえ紗幕を通して光景を見るような、といっては誇張になるかもしれないけれども、オーケストラ全体の響きが柔らかい色彩に覆われていて、音楽は存分に激しく息づきながらも、決してヒステリックに絶叫するものになっていない。
 指揮者によってはこの曲でオーケストラをひたすら鳴らしまくり、いやが上にも凶暴な交響曲にしてしまう人がいて、そんな時はただもううるさくて辟易させられるばかりだが、インバルのような成熟した指揮者は、さすがにそのような愚をひけらかすことはないのである。

 もちろんこれは、インバルと都響の演奏が、マーラーの異様ともいえるほどの激情の爆発を和らげて、単に起伏の大きな構築にとどめてしまったという意味ではない。それどころか、特に第4楽章は今回最も優れた演奏だったと言っていいが、そこではマーラーの自己陶酔的な悲壮感と、威圧的な怒号と、それに作品として構築された美感とが、ぎりぎりの線上で調和を保っていた。それを創り出したのは、インバルの円熟と、特に今夜は驚異的に柔軟な演奏を聴かせた都響の真摯さであったろう。
 このシリーズも、今後がいよいよ期待できる。次は4月の「千人の交響曲」だ。

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