2017-08

7・17(日)アラン・ギルバート指揮東京都交響楽団

   サントリーホール  2時

 こんな猛暑の真昼間に、熱したフライパンのような街を通って音楽会を聴きに行くのは大変なことのはずだが、嬉しい驚きというか、ホールの客席はぎっしり埋まっている。
 昨夜の東京響の定期もほぼ満席だったし、先週水曜日の東京シティ・フィルもよく入っていた。理由はあれこれ考えられるが、いずれにせよこのところ、日本のオーケストラの演奏会へのお客さんの入りが良くなっているということは、慶ぶべき現象ではある。

 今日の都響は、定期ではなく、「都響スペシャル」。2日連続公演のうちの初日だ。アラン・ギルバートが客演指揮、フランク・ペーター・ツィンマーマンがソリストに登場した。そのツィンマーマンが弾くベルクの「ヴァイオリン協奏曲」を挟み、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」と「交響曲第1番ハ短調」というプログラムである。

 アラン・(タケシ)・ギルバートといえば、人も知る日系米国人。父がニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者、母が日本人という。ニューヨーク生れの指揮者がニューヨーク・フィルの音楽監督に就任(09年)したのは史上初とのことで、随分と話題になったものであった。

 久しぶりに彼を聴いて、少々驚いたのは、その音楽が以前に比べ別人かと思われるくらい、重厚でスケールが大きくなっていること。
 ブラームスの2曲では、豊かな低音を基盤とした濃密な音が組み立てられ、それに都響のしなやかで厚みのある弦の音色と、均衡の取れた管の響きとが加味されて、まるで昔のドイツのオーケストラが演奏するような、深々とした響きのブラームスになっていた。
 「ハイドン・ヴァリエーション」の冒頭の木管など、何と温かい音色で、しかも流麗な演奏なのかと、そこからまずハッとさせられてしまう。また交響曲の第1楽章で、音楽が激しく高揚したまま再現部になだれ込む個所など、あんなに物凄い気魄にあふれた演奏は、なかなか聴けないものだ。

 ギルバートの指揮はこれまでにもニューヨーク・フィルや北ドイツ放送響、日本のオーケストラなどとの演奏で何度も聴いたことはあり、いい指揮者だとは思っていたものの、概して几帳面で端然として淡白な演奏が多かったので、正直言ってあまり関心が湧かなかった。だが、今回のように陰翳豊かで味の濃いブラームスを聴かせる人だとなると、俄然興味が湧き起こって来る。
 都響との相性も、ひときわ良かったのだろう。多忙な若手(44歳)だが、将来への布石として、今のうちに首席客演指揮者に迎えておいた方がいいのでは・・・・と、余計なことまで考えた次第。

 ツィンマーマンとの協奏曲の演奏が、これまた思いがけぬ「情の濃さ」(?)と微細極まる表情で、素晴らしかった。他の方はどうか知らないけれども、私自身、この曲をこれほどベルクの晦渋な重圧から解放された気分で聴けたのは、多分初めてである。
 そして、彼がアンコールで弾いたバッハの「ソナタ第2番」のアンダンテの、じわりと沁み込んで来るような深い情感。

コメント

7月、良い演奏に辿りついて嬉しかったです。(一言で、極夏の演奏会としての最上のひとつ)
******あと、蛇足*********
以前は、初めてN響と共演していた頃は、あんな大曲(ショスタコNo.4だったヶ)をやっているのに<<几帳面で端然として淡白な演奏>>だったのに。

ニューヨークフィルのインターネット放送を聴いていると、やはり聴きたいと思う演奏ですし。マゼールの頃とは違って、おおらかですし。
今回の選曲、良かったです。

マーラー。ブラームス。チェコ物。いずれかでまた、再共演を。
東京の首都経済とアメリカの経済都市の架け橋としての友好を。
これは、それこそ規模は違ってきても<Met>roporitanとしての親善です。東京都の仕事です。
*********************
また、来て。安価な料金上質な演奏を聴けるし。商売っ気ださないでね。

18日を聴きました。
ベルクがとにかく絶品。ゾッとするような無機的な表情から情感たっぷりの音まで、表現力の幅広さに唖然とするばかり。バックのオケが緊張感に富んだ緻密な演奏で、私もこの曲の実演で初めて昇天?できた気がします。
ブラ1は重心が低く、ダイナミックで豪快でしたが、ホルンが強奏でやや混濁し(それでももちろん快演)、このへんが在京オケの課題でしょうか。
ギルバートさん、またNPOか都響で来日してほしいです。

アランのブラームスは絶品。

NYPシェフ就任記念来日公演でも、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(ツィンマーマン)を指揮しましたが、素晴らしいものでした。評論家は無視しましたが。(いつものことです。)

今回のブラ1も質実剛健、しかしヴァントのように凝縮し過ぎることなく、ブラームスの響きを堪能させてくれました。ああいう響きは、東条さんも仰るように、懐かしいドイツの響きですね。(ドイツの指揮者はもっとセコく小作りですが。)

それにしても、都響の低弦の剛毅さはただ事ではありません。N響に匹敵、いやそれ以上?矢部コンマスをはじめ、ソロも出色。もっと欧州で演奏すればいいのに。インバルは職人としては◎ですが、芸術家としては△。どの曲もゴリゴリとメタリックな響きになってしまいます。(都響が鳴るようになったのは彼のお陰ですが。)

アラン=首席客演指揮者、いいですね。ただ、彼はNYPのシェフですから、もっとカッチョいいタイトルがいいなぁ…。あっ、英語にすればみんな同じか。

ギルバート

>父がニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者、母が日本人という。

父親は元ニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者、日本人の母親は現役ニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者です。

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