2017-10

7・6(水)東京二期会 プッチーニ:「トゥーランドット」初日

   東京文化会館大ホール  6時半

 幕が開いた途端に、巨大な歯車の回転するメカニックな機械工場のような光景が目に入る。
 なんだ、これは一昨年びわ湖ホールと横浜で上演されたあの舞台じゃないか、と驚いたのは、こちらが忙しさと不勉強のため事前の情報をしっかり把握していなかったため。粟国淳の演出、横田あつみの舞台装置によるあのプロダクションの再演であることは、上演前から発表されていたことだった。
 私はそのプロダクションが結構気に入っていたから、今回も寛いで愉しむことができた。

 ただし装置は、以前のはもう残っていないので(もったいない)、新たに作り直したものだそうである。なるほど、そう言われれば、前のとは少し違うような気もする。
 それに、前回の時の方が、もう少しあの巨大なメトロポリス的な装置がドラマ全体に対して、より威圧的な迫力をもって生かされていたような記憶もあるのだが・・・・定かではない。

 演出は、前回に観た時にも様式優先の印象があって、演技もさっぱり演劇的でなく、いかにも(良くない意味での)オペラ的であることに落胆したものだが、今回も同様だ。
 メトロポリスに働く作業員、軍隊がロボットのように動く光景は卓抜のアイディアだったが、今回はそこに人間味のようなものが強く加わった印象がある。したがってあのメカニズムの威圧感や恐怖ともいうべき要素が、ドラマ全体に意味を以って有効に働いているとは言い難くなってしまったように見える。
 ただ、非常に大掛かりでスペクタクル性に富んだ舞台装置なので、見た目には大いに楽しめることは事実だろう。

 今日はAキャストで、中国の姫トゥーランドットに横山恵子、韃靼の王子カラフに福井敬、その父ティムールに佐藤泰弘、奴隷娘リューに日比野幸、中国皇帝アルトゥムに田口興輔、3人の大臣に萩原淳・大川信之・村上公太、役人に小林昭裕。

 指揮は、2年前の上演の時には沼尻竜典だったが、今回はジャンルイジ・ジェルメッティだ。
 このベテラン指揮者のテンポの、まあ速いのなんの。音楽が恐るべき勢いで驀進する。読売日響も大音響で豪快にとどろきわたる。痛快というか、胸がすくというか。
 20分の休憩2回を含み、8時58分頃には終ってしまった。つまり、演奏時間は、正味たった1時間50分だったことになる。アルファーノ補作版で、カットがあったわけではない。
 だらだら指揮されるよりは余程よく、またこのメカニックな舞台装置にも雰囲気はぴったりだが、その反面、プッチーニの音楽の中の精妙なニュアンスと詩情は等閑にされ、勢いで押しまくられた演奏という印象は免れないだろう。

 比較的ソフトな表情の演技を見せる横山恵子のトゥーランドット(優しい高畑淳子といった感だ)など、前回の沼尻の叙情的な指揮の中ではよく合っていたが、今回のジェルメッティのラフな音楽づくりの中では、ややおとなしい存在と化してしまう。一方、福井敬は、どんな状況でも巧く役柄を生かせるという力を持っているが、ジェルメッティのこの慌しい指揮の中では、ややヘヴィだったか? あまり無理をしないでくれるよう祈る。

 リューの日比野幸には注目していた。ちょっとヴィブラートの強いところが気になるが、よく通る美しい声である。3人の大臣ピン、パン、ポンも、今回は良かった。

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