2019-08

6・30(木)川瀬賢太郎指揮東京フィルハーモニー交響楽団

   東京オペラシティコンサートホール  7時

 創立100周年記念として、日本人アーティストばかりを集中的に起用している今シーズンの東京フィル――大震災後の来日演奏家キャンセル多発の中、これが図らずも幸いしていることは周知の通りだ。6月の定期は注目の若手指揮者2人の競演となっていて、これもいいアイディアだと思う。
 今日は川瀬賢太郎が指揮。武満徹の「3つの映画音楽」、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」(ソロは前橋汀子)、ショスタコーヴィチの「交響曲第5番」。

 この種のプログラムでは、川瀬の若者らしい気魄がモロに打ち出された演奏になっているのが面白く、嬉しい。
 最初の武満作品の、特に1曲目の「ホゼー・トレス」の冒頭では予想外にメリハリが強く、鋭角的な響きになっていたのが興味深い。
 また協奏曲では、迫力だけで押し切った感のある前橋汀子のソロに対抗してか、オーケストラのテュッティ部分では轟然たるフォルティシモを叩きつけていて、これには少々びっくり。

 本領発揮は、交響曲においてである。第1楽章前半は念入りに過ぎて、ややもって回った感もなくはなかったものの、後半の怒号と絶叫には、若手指揮者ならではの傍若無人な勢いがあった。第3楽章の叙情にも、張りつめたものがある。
 第4楽章前半では、アッチェルランドが早い時期に頂点に達してしまい、あとはひたすら馬力で押し切ってしまった感もあったが、このあたりはもう少しテンポの制御の呼吸を綿密に考慮しては如何かと思う。

 熱狂怒号とはいっても、その底流には、どこか醒めた意識と端整さが漂っているように感じられてならないのが彼の指揮だが、それらが名実ともに均衡を保つようになるのは、これからの経験と修行次第だろう。

 しかし、感心させられたのは第4楽章の最後だ。すでに最高潮に達している金管をさらに一瞬グイと強め、単に音量だけということでなく、音楽全体の力感を瞬間的に増大させるという手法を聴かせていた。
 これは、昔カラヤンとベルリン・フィルがモーツァルトの「リンツ」の大詰め個所や、ブルックナーの「7番」第2楽章頂点、ベートーヴェンの「2番」の幕切れなどで聴かせたこともある大技で、いつも必ず成功するというものではない。その点、今回の演奏での川瀬の体当たり的盛り上げも良かったが、東京フィルのトランペットの奮闘も特筆すべきだろう。

 東京フィルは、その他の細かい部分ではかなり粗さもあり、フォルティシモの音色に歯止めの利かなくなるようなところもあった。だが、先頃の三ツ橋敬子の時と同様、若手指揮者を熱心にサポートする姿勢が感じられたのは、快かった。

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