2019-05

6・26(日)三ツ橋敬子指揮東京フィルハーモニー交響楽団

   オーチャードホール  3時

 昨年のトスカニーニ国際指揮者コンクール準優勝(つまり第2位)で話題をまいた三ツ橋敬子が、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」と「英雄交響曲」を指揮する。期待の女性新人指揮者、2日前のサントリーホール公演と併せ、今回が東京フィル定期初登場である。

 一昨日の協演ピアニストは横山幸雄だった(私は聴いていない)が、今日は何と、楽界の怖~い(?)大御所、中村紘子だ。
 舞台に出て来た時からこの2人、どう見ても、大先生とその付き人――といった恰好である。威風堂々闊歩する大ベテランのうしろを、三歩下がって影を踏まず、ひたすら恐悦恐縮、畏まってチョコチョコとついて歩く指揮者。
 演奏が終ってからも、中村紘子が彼女を盛り立てようとしているのに、「イエ、とてもわたくしなど」といった調子で、遠慮しまくって逃げ腰である。客席からは、温かい苦笑。

 随分謙虚な方と思われ、人間的には大変結構ではあるが、舞台にいる限りは既にプロの指揮者なのだから、そんな動作ではサマにならぬ。もっと悪びれず、図々しく、堂々と、颯爽としていて貰わないと、示しがつかぬ。それに、あのヘア・スタイルもメイクも、遠目に見てさえもう少しアーティストっぽくして欲しいではないか?

 ・・・・などと、のっけから言いたい放題のことを並べてしまったが、その三ツ橋敬子がいざ指揮台に上り、指揮をし始めると、実に歯切れのよい、小気味よいほどの引き締まった音楽が流れ出すのである。
 協奏曲では、指揮姿はピアノのふたの陰に隠れて見えなかったが、中村紘子の豪快なソロ(もっとも日頃に似合わず、少し遠慮がちだった雰囲気もある)に対して、生真面目に几帳面に、整然とオーケストラを響かせる。

 後半の「英雄」にいたるや、彼女は、登場や答礼を含め、人が変わったように、生き生きとした表情で指揮をし始めた。速めのテンポと引き締まったリズムで、快調にたたみかける。
 第2楽章の「マジョーレ」の頂点へのクレッシェンド、第4楽章終り近くの「ポーコ・アンダンテ」の頂点など、緩徐個所においても、胸のすくようなエネルギー感に満ちた演奏であった。

 あまり細かく振らずに、イメージで音楽をつくろうとするタイプの人のようだが、東京フィルの演奏に伸び伸びした雰囲気が感じられたのも、そのせいだろうか。小柄ながら、腕だけで指揮をするのではなく、下半身を安定させ、体の重心をしっかり決めて指揮している。それが、オーケストラから確固としたリズムを引き出すのかもしれない。

 東京フィルは、本当にいい演奏をした。若い指揮者を盛り立ててやろうという熱意が楽員たちの中に感じられたのも、好感を呼ぶ。だが、海山千年のオーケストラをしてそのような気にさせた若い指揮者の個性と情熱も、並みのものではないだろう。

 ともあれ、溌剌として快く、魅力的な「英雄交響曲」の演奏であった。
 面白い若手が出て来たものだ。期待充分である。

    音楽の友8月号演奏会評

コメント

いいエロイカでした

サントリーホールを聴きました。彼女、横山さんにも少々遠慮がちで、演奏もピアノともどもあまり面白いものではありませんでした。

でもやはり、「エロイカ」は一変。小気味良いテンポでオーケストラのコントロールも充分。久しぶりにワクワクしながらあの曲を楽しみました。

でもあのオーケストラのホルンは何とかならないものでしょうか。第3楽章などもう少し整っていたら、音が濁らなかったら、もっと素晴らしかったのにと残念でした。

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