2017-11

5・31(火)飯守泰次郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団
 ワーグナー:「ジークフリート」第1幕(演奏会形式)

    ザ・シンフォニーホール(大阪)  7時

 飯守泰次郎(前・常任指揮者)の桂冠名誉指揮者就任記念と銘打たれた定期公演。
 前半にモーツァルトの「ピアノ協奏曲第20番ニ短調」が、ケマル・ゲキチ(当初の予定はイェルク・デムス)をソリストに迎えて演奏され、後半にワーグナーの「ジークフリート」第1幕が演奏会形式(字幕付)で、竹田昌弘(ジークフリート)片桐直樹(ヴォータン)二塚直紀(ミーメ)をソリストに演奏された。終演は9時半。

 「飯守のワーグナー」は、わが国のワーグナー演奏における一つの「定番」と言っていい。
 大阪でも、私はいくつか聴いた。あの関西二期会公演の「パルジファル」舞台上演をはじめ、関西フィルの定期での演奏会形式による「ワルキューレ」第1幕(09年3月)、「トリスタンとイゾルデ」第2幕(10年7月)など。どれも、この指揮者ならではの、滋味あふれるワーグナー演奏であった。

 今回も、いい味の演奏だった。
 概して近年の欧州では、乾いて殺伐としてさり気ないスタイルのワーグナー演奏が主流を占めているが、飯守の指揮には、それらが失ったヒューマンな情感といったものが未だ豊かに残っている。
 この第1幕など、やや断片的で、滔々と流れない音楽で構成されているため、下手をするとえらく散漫な印象になりかねない。にもかかわらず、このように瑞々しい雰囲気にあふれた音楽として聴けたのは、ひとえに飯守の感性と力量によるだろう。

 3人の歌手も、素晴らしい出来を示していた。
 竹田昌弘は、すでにパルジファルやジークムントやトリスタンで見事な歌唱を披露して来ている人だ。今回も(良い意味での)「少年ジークフリート」というイメージだが、「鍛冶の場」でも管弦楽の咆哮に屈することなく若々しい声を聴かせていた。
 ヴォータンの片桐直樹は、これはもう貫禄で、文句のつけようがない。さらに嬉しい驚きは、ミーメを歌った二塚直紀だ。これは一流のミーメである。

 舞台前面に立った彼らの声は、いずれもオーケストラに消されることなく明晰に響いていた。これは飯守のオーケストラの鳴らし方の巧さもあるだろう。もう一つ、このザ・シンフォニーホールの空間の容量が、歌とオケとのバランスに適しているためもあると思われる。サントリーホールやオーチャードホールだったら、オーケストラがこれだけ鳴れば、声は多分消されてしまうのではなかろうか。

 関西フィルの健闘は、言うまでもない。
 今日は16型の大編成。もともとこのオケは楽員数60名前後だから、かなりトラも入っているはず。したがって正直なところ、どこまでが関西フィルの実力なのか(失礼!)ということになるのだが、しかしとにかく渾身の演奏であったことに間違いない。
 飯守&関西フィルのこのワーグナー・シリーズには今後も期待したいが、「指環」は編成が大きいし、カネがかかってたまらないだろう。「さまよえるオランダ人」とか「ローエングリン」なら?(と、終演後にロビーで西濱事務局長と立ち話をしたのだが、彼の反応は「ウーン」)※。

 モーツァルトでは、前半はすこぶる陰々滅々(?)たる演奏だったが、第3楽章に至ってオーケストラはシャープな力感を加えた。
 ゲキチのソロは、念入りに一つ一つの音に没入するといった思索的なスタイルだ。アンコールに弾いたシューベルト~リストの「セレナード」(「白鳥の歌」第4曲)での、ポゴレリッチ並みの遅いテンポと凝りに凝ったアゴーギクともども、些か辟易させられた。こういう「もって回った」演奏には、最近は全く共感できなくなっている。
 「セレナード」など、先日のリーズ・ドゥ・ラ・サールの、あの率直なテンポによる清涼な演奏の、何と夢幻的で美しかったことか・・・・。

※コーラスや大勢のソリストが入れば更にカネがかかるではないか、とコメントを頂戴しました。ごもっともです! では、ソリスト5人と最少の女声合唱による「さまよえるオランダ人」第2幕でも。

コメント

何時も見らしていただいております。去年ケルンのリングもみにいっております。今回の「ジークフリート」特に三ーメの二塚氏、本当にすばらしかったとおもいます。今後とも辛口の批評をお願いします。

ブレークスルー

会場でお見かけしました。やはり来られていましたね。
国内勢でこれほどの演奏が聴けるとは大きな驚きでした。
なかでもミーメ二塚直紀さんはブレークスルーとも言える舞台だったと思います。
詳細は拙HPに。

そうですか?ゲキチの演奏は素晴らしかったのですが、音楽を頻繁に聴くのを商売にしておられると、清涼飲料水のような演奏の方が、ボディのしっかりしたワインよりも心地よくなるもののようですね。サールは、最初のCDから注目していますが、ゲキチと並べてコメントするようなレベルの演奏家には育っていないように思います。若いし、これからじゃないでしょうか。

ところで、「オランダ人」や「ローエングリン」のようなコーラスが入る演目の方が、合唱はアマチュアで無報酬だとしても、プローベのコストがかかるのじゃないでしょうか?多少、オケの編成が大きくなっても、全体コストを考えると、歌手とピアノリハーサルをやって、オケとリハーサルするだけの方が、コーラスのリハーサルを上乗せしなくて良いのでよろしいのじゃないでしょうか?




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