2017-11

5・7(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団

  東京オペラシティコンサートホール  2時

 久しぶり、ユベール・スダーン。
 大震災直後の来日中止の理由については既に私も耳にしていたが、要するにイタリア在住オランダ人の彼は、訪日するつもりでパリまでは出て来たものの、イタリア・フランス・オランダの領事館(?)から渡航自粛の勧告(ほぼ強制的なものだったらしい)を受けた上、生命保険会社からは「渡日してガンになった場合には保険金を払わぬ」という免責まで通告され、挙句の果ては、乗るつもりだったエール・フランスからも強い勧告を受けて、動きが取れなくなってしまった、ということにあるのだそうだ。
 事務局の話では、ミューザ川崎シンフォニーホール内部の惨状を目の当りにしたスダーンは大きな衝撃を受けながらも、「大丈夫、私も皆と一緒に頑張る」と宣言し、オケを喜ばせたとのことである。

 そうしたもろもろの背景ゆえか、今日のコンサートは、定期ではないけれども、凄まじくリキの入った演奏であった。

 冒頭のラヴェルの「マ・メール・ロワ」組曲は、均整のとれた美しい立派な演奏ではあったが、何か几帳面すぎたような感がなくもない。

 だがスダーンの巧みな設計に驚き、感嘆させられたのは、次のブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」においてであった。
 そのオーケストラ・パートがこれほどシンフォニックで壮大で揺るぎなく構築された演奏をナマで聴いたことは、かつてなかった。録音ではカラヤンの指揮したのがそういう特徴を持っていたが、もちろんスダーンの指揮した今回の演奏は、あのような濃厚なスタイルとは違い、もっとスリムで筋肉質で、鋭い。

 ソロの個所ではオーケストラを沈ませつつ、テュッティの個所に到るや剛直に響かせ、その繰り返しを以って大きな起伏を巧みにつくって行く呼吸も鮮やかだ。
 東響がまた、彼の指揮に対して実に柔軟に反応している。第2楽章後半でソロに渡す直前の弦楽器群のディミヌエンドの、見事だったこと。

 こうしたスダーンと東響の精妙な構築に対し、ソリストのクララ・ジュミ・カンが、すこぶるスケールの大きな演奏でわたり合う。
 仙台とインディアナポリスのコンクールで昨年優勝を飾った彼女は今年まだ24歳だが、力強い粘りのある演奏が特徴で、この若さにしては非常に情感の豊かな音楽を奏でる人だ。昨年メンデルスゾーンやベートーヴェンの協奏曲を聴いた時には、その嫋々たる歌いぶりが少々情緒過多に感じられ、鼻につくところもあったけれど、今日の演奏ではあまり過度な思い入れも感じられなくなっていたのは、彼女の変化か、それとも作品への巧みな対応の表われか。

 なお彼女、Clara Jumi Kang、韓国系ドイツ人だから、「ジュミ」でなく「ユミ」と表記すべきではないかと思うのだが、どうなのでしょう? 
 アンコールはエルンストの「シューベルトの《魔王》による大奇想曲」。鮮やかだが、「魔王の囁き」の部分にはもう一工夫欲しいところ。6月1日の東京でのリサイタルが楽しみである。

 プログラムの後半は、ビゼーの「アルルの女」第1組曲と第2組曲。
 これまた、ポピュラー・コンサート風の長閑で田園的な「アルルの女」という演奏とは、全然違う。第1曲冒頭からして切り込むような強烈さで、時には内声部を際立たせて聴き慣れない複雑な響きを出す。
 スダーンの手にかかると、これは「品のいい通俗音楽の大関格」どころか、すこぶる立派な、緊迫感を備えたシンフォニーのような性格を持つに至る。特に第1組曲がそうだ。

コメント

ドイツ人のおばちゃんがユミさんをJumiと書いたのはみたことアルニャリね。ところで、韓国に「ユミ」さんって名前あるのかニャ?そこが問題にゃが猫にはわからニャイ。日本の原発問題、ヨーロッパの生保が免責!と言うほど怖れられたにゃりね。とうの日本人だけだニャ、のんびりしとるのは。猫も土のセシウムとか怖いニャリよ。土の上歩いてっからさ~しっかり頼むニャ、日本の人間さんよ~。それにしても、いや~スダーンさん、来てくれてありがとニャ~!

私も行きました。感動しました。コンサートで音楽を聴くことの楽しみをこれほど感じたことはありませんでした。ブルッフのV協は私が聞いた内で最高の演奏でした。スターンと東京交響楽団の演奏は聞き逃せませんね。
こんなに素晴らしいのに客席は空席が目立ちました。東京交響楽団はミューザが使えなくなり苦労していますが、大丈夫でしょうかね。頑張ってほしいですね。

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