2020-07

4・28(木)東京二期会 モーツァルト:「フィガロの結婚」初日

   東京文化会館大ホール  6時30分

 宮本亜門の演出で、このプロダクションは2002年2月、2006年9月に続く3度目の上演。

 第1回の際の日記をひっくり返してみると、宮本亜門の引き締まった演出、人間関係の構図が明確に生き生きと描き出されている舞台に感心した――というメモがある。多田羅迪夫が演じたスキンヘッドのアルマヴィーヴァ伯爵が迫力満点だった、とも書いてあるが、そうだったっけ? 

 亜門先生モノとしては、「ドン・ジョヴァンニ」や「コジ・ファン・トゥッテ」に比べると随分マットウでおとなしい演出だ。が、演技の微細さという点では、日本人演出家の中でも群を抜いて徹底していると言っていいだろう。
 たとえば「もう飛ぶまいぞこの蝶々」での、ケルビーノを揶揄していると見せながら実は伯爵への当てこすりをやっているフィガロと、それに気づいて激怒しそうになる伯爵との駆け引きの細かい表情。
 そして、「恋の悩み知る君は」で、ケルビーノと伯爵夫人の間にメラメラと妖しい雰囲気が立ち昇って来る描写ときたら、照明(大島祐夫)効果もあって、呆気に取られるほど見事だ。

 何より今回は、主役たち――特に女性歌手たち――がみんな魅力的なのが好い。登場人物を魅力的に見せるのは、ひとえに演出家の力量なのである。

 歌手陣はダブルキャストで、前回・前々回に比べ、若手がかなり進出していて、ここでも二期会の歌手の層の厚さが証明されているだろう。
 今日はAキャスト。どこまでを若手と呼んでいいかは微妙なところだが、とにかくまず、スザンナの菊地美奈。冒頭こそやや硬かったが、ちょっと意志の強い性格の侍女を演じて、歌唱とともに後半にかけ調子を上げた。
 すこぶる映えたのはケルビーノの杣友惠子、音程にもう少し安定が欲しいが、舞台姿に華がある。

 この上なく魅力的だったのは伯爵夫人役の澤畑恵美で、まろやかな声もさることながら、演技の巧さ、特に顔の表情の演技、眼の動きの巧みさには、感嘆させられた。第2幕での伯爵との応酬場面など、見事というほかはない。

 これらに対し、男声歌手陣は、伯爵役の鹿又透、フィガロの久保和範ら、破綻はないものの、個性という点では女声3人に一歩を譲ったかもしれぬ。ドン・バルトロ役の池田直樹がベテランの味を出していて、よかった。

 今回の指揮は、老練デニス・ラッセル・デイヴィス。
 現代音楽に強いこの指揮者に、実は大変期待していたのだが、落胆させられること甚だしい。いまどき、あんなのんびりした「フィガロ」をつくる人もいるのかと驚いた。テンポがやたら遅く、パウゼも長く、劇的な盛り上がりと緊迫感にも不足する。第1幕などイライラさせられてしまったが、歌手たちも最初のうちはこのテンポを持ちきれなかったようで、スザンナが走り、フィガロも走り、伯爵も走り、オケと合わなくなって仕方なくスピードを落すといったところも少なからず聞かれたのである。
 こういうスタイルのモーツァルトは、今の私の好みには全く合わない。
 20分の休憩を1回挟んで、演奏終了は10時3分頃。テンポが遅いから、このくらいの長さになる。

 とまあ、――ここまでは私個人の嗜好による日記である。だが、これを批評としてまとめるとなると、もっと客観的に記述しなければならない。で、ここから先は、「音楽の友」の6月号の演奏会評に。

   音楽の友6月号 演奏会評

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