2020-04

4・24(日)ハンヌ・リントゥ指揮東京都交響楽団のシベリウス

   サントリーホール  2時

 8時半のANA52便で帰京。乗客が数十人しか乗っていないのに驚く。いくら日曜の朝とはいえ、気がかりな世相だ。
 腰はかなりの程度まで回復し、日常生活ではさほどの苦痛は感じなくなっているが、飛行機のエコノミークラスの椅子だけは、硬くてどうにもダメだ。ちょっと座っているだけで痛みに耐え切れなくなる。こんな調子では、外国取材旅行など、当分は諦めなくてはならぬ。

 都響への客演指揮は、今日はフィンランドの若手ハンヌ・リントゥ。
 現在タンペレ・フィルの芸術監督・首席指揮者で、2013年からはフィンランド放送響の首席指揮者就任が決まっているという。
 08年来日の際には聴いていなかったので、今回はシベリウスの作品中心のプログラムでもあり、楽しみにしていたところだ。
 同じフィンランド人でも、インキネンと違い、リントゥは予定通り来てくれた。フィンランド外務省や大使館による渡航自粛要請云々より、要するに本人個人の考え次第というわけだろう。

 プログラムは、シベリウスの「タピオラ」で開始され、コルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲」を挟んで、後半にシベリウスの「第5交響曲」があり、「フィンランディア」で結ばれる。ちょっと変わった構成である。

 そのリントゥ、長身を縦横無尽に翻して大暴れ。ノセダさながらに獅子奮迅の指揮ぶりで、音楽にも豪快な力感がある。
 1曲目のシベリウスの「タピオラ」は、荒々しい咆哮(というより怒号)も交えた激烈な演奏で、まさに怒れるスオミ(フィンランド)の魂の発露といった感。「第5交響曲」第1楽章幕切れでのひた押しに押す昂揚も目覚しい。
 このフォルティシモの和音の歯切れよさもリントゥの特徴らしく、「ヴァイオリン協奏曲」第1楽章の最後といい、「第5交響曲」第1楽章の最後といい、最強音で叩きつけるようにスパッと音を切る演奏は、なんとも鮮やかで、痛快無類というべきものであった。

 しかしその一方、非常に細かく神経の行き届いた音楽づくりをするのもリントゥの特質だ。
 たとえば「第5交響曲」第3楽章前半での細やかで緊迫度の高いトレモロ、その大詰めでの息の長い高揚と、断続する和音の間の緊張感など、出色の出来だった。
 「フィンランディア」での完璧な均衡を保った金管の咆哮も、綿密な強弱の変化(楽譜にはない)も、中間の有名な主題でぐっとテンポを落しながら神秘的なほどに歌わせた劇的な演出も、いずれもリントゥの力量の見事さを示すものだろう。

 都響も、曲を追うごとに復調して行ったようだ。
 最初の「タピオラ」では、いくら激しい荒々しさを求めた演奏だったとはいえ、オーケストラのあまりの音の粗さと汚さには失望させられたが、協奏曲以降は次第にバランスが整い始め、最後の「フィンランディア」では、震災前の都響の水準を――といってもオケが打撃を蒙ったわけではなく、1ヶ月間も無為無策に演奏会を中止していただけの話だけだったが――ほぼ全面的に取り戻した感がある。
 この曲でのような演奏の水準であれば、文句はない。この調子で行ってくれることを願いたいものだが・・・・。

 協奏曲のソロは、ゾフィア・ヤッフェに代わって豊嶋泰嗣が弾いた。
 ライバル・オケのコンマスがソリストとして登場するのも面白いが、もちろん彼もソロ活動では有名だし、この曲を弾く人として些かも遜色はない。黄金時代のハリウッドの映画音楽を思わせる管弦楽の音色に呼応する意味で、もう少し色気があってもいいのでは、と思わせるところもあったが。

 なお、この日も演奏前に指揮者のスピーチがあり、また照明を半明かりにしてバッハの「アリア」の演奏と、全員起立しての黙祷があった。先週の定期でも同じことをやったばかりだ。犠牲者へ祈りを捧げること自体は、吝かではない。しかし都響は今頃になって、これをいつまで同じパターンで続ける気か?

 そういえば、都響とは正反対に、定期をやる気があってもホールが使えずに苦しい状況に追い込まれていた仙台フィルの方は、仙台市内の私立学校(常盤木学園)の300人収容のホールを借りて、4~6月にもオーケストラ公演を開催することが決まったそうである。
 「オーケストラとしての演奏を私たちの仙台で継続できることは、何物にも代えがたい喜びです」と事務局は言う。それが、音楽家の心というものだろう。こちらの方は、事務局と楽員たちとの気持が、どうやらぴったり合っているようだ。

コメント

フィンランド、ムーミンの国だニャ!日本へようこそ!こうやってフィンランドの音楽が聞けるのはすばらしいニャ。仙台フィルも応援っ!!

>といってもオケが打撃を蒙ったわけではなく、1ヶ月間も無為無策に演奏会を中止していただけの話
そうだったのですか。公務員なのに呑気なもんですね。楽団員に、「演奏」に対する積極性が欲しいですね。そんな調子だからインバルがチェコフィルとマーラー5番録音しちゃうんでしょう。
新日が頑張ってるのに、都響の体たらくはどういうこと???

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