2020-02

2020・2・23(日)チョン・ミョンフン指揮東京フィル「カルメン」

     Bunkamuraオーチャードホール  3時

 チョン・ミョンフンと東京フィルのオペラ演奏会形式上演の一環。
 マリーナ・コンパラート(カルメン)、キム・アルフレード(ドン・ホセ)、チェ・ビョンヒョク(エスカミーリョ)、アンドレア・キャロル(ミカエラ)、上江隼人(ダンカイロ)、清水徹太郎(レメンダード)、伊藤晴(フラスキータ)、山下牧子(メルセデス)、青山貴(モラレス)、伊藤貴之(スニガ)の出演。合唱が新国立劇場合唱団と杉並児童合唱団。

 主役4人が伊・韓で、わが日本人は脇役ばかりというのは少々不甲斐ないが、世界のオペラ界における実績という面からみれば、日本人歌手は韓国人歌手群に圧倒的に水をあけられているのは、残念ながら争えぬ事実である。但し今日の歌手陣は、脇役すべてに至るまで、全員が力強く、素晴らしい出来だった。
 欲を言えば、エスカミーリョ役の歌手にもう少し安定感が欲しいということだろうか。強く印象に残ったのは、ホセ役のキム・アルフレードの強靭な声と、ミカエラ役のアンドレア・キャロルの愛らしい表現力。

 チョン・ミョンフンの指揮は、例の如くスピーディで切れがよく、強い推進力にあふれたものだ。全曲を緩みなく引き締め、厳格なバランス感を生み出すところも、近年の彼のオペラにおける指揮に共通している。その意味では、極めて立派な演奏だったと言っていいだろう。
 ただその一方、第1幕から第4幕まで、すべて緊張度の高い演奏で固められているため、オペラ全体に「山場感」というのか、「クライマックス感」というのか、それが些かぼやけたような印象を与えたことは否めまい。

 また、全曲が強いエネルギー性を以って、一気呵成の速めのテンポで演奏されて行くので、音楽作品としては充実感を生んだかもしれないが、登場人物の感情の襞が充分に描かれなかったという恨みを残すだろう━━これは、以前に彼が東京フィルを指揮した「トリスタンとイゾルデ」(☞2013年11月23日の項)でも私が強く感じたことなのである。今回の主人公たちもまた、疾風のようにこの世を生き、走り抜けて行ったというわけか・・・・。

 東京フィルの演奏は、ピットでの演奏とは比較にならぬほど豊かな音だった。コンサートマスターは三浦章宏。

 蛇足だろうけれども、私にとっては大問題なので、最後に一言。
 今回の上演では「アルコア版」楽譜が使用されるという情報を受けていたので、依頼された東京フィルのWebの事前解説には、ギロー版とアルコア版との楽譜の違い、前者のレチタティーヴォと後者のセリフにおける人物像(特にドン・ホセ)の描き方の違いなどについて、その面白さと期待などを書いた。
 ところが実際は、セリフはほとんどカットされ、しかもあろうことかドン・ホセとエスカミーリョが決闘するシーンの音楽も、極度に短縮されたギロー版で演奏されてしまっていたのである。セリフをまともに入れれば長大なものになるので、大半はカットされるだろうとは思っていたが、まさかほとんどナンバーのみの連続の形になるとは。それにまた「折衷版」の演奏になるとは・・・・。
 東京フィルのWebの記事をお読みいただいた方には、とりあえず私からお詫び申し上げたい。

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