2020-02

2020・2・9(日)トレヴァー・ピノック指揮紀尾井ホール室内管弦楽団

       紀尾井ホール  2時

 西にいずみホールの「いずみシンフォニエッタ大阪」あれば、東に紀尾井ホールの「紀尾井シンフォニエッタ東京」━━いや現在の名称は「紀尾井ホール室内管弦楽団」あり。

 その「紀尾井ホール開館25周年記念演奏会」に、トレヴァー・ピノックが客演指揮者として登場し、モーツァルトの「交響曲第40番」「アヴェ・ヴェルム・コルプス」「レクイエム」(ジュスマイヤー補筆版)という魅力的なプログラムを演奏した。
 コンサートマスターは玉井菜採。

 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を第2部で、「レクイエム」へ続ける形で演奏するのかな、と思っていたら、案に相違して、それを休憩前に、「40番」のあとに演奏する、ということがプログラム冊子に掲載されていた。
 事実、最初にオーケストラと一緒に合唱団(特別編成の紀尾井ホール合唱団)も入って来て、奥にずらりと並んだので、そうするとこの声楽曲を「40番」のあとにアタッカで演奏する気なのか、それもいいな、とおそらく聴衆の誰もが思いこんでいたのではなかろうか。

 「40番」が終っても、しばらく拍手は起こらなかった。ところが、何となく様子が違う、という雰囲気が出て来て、誰かが拍手を始め、次いでみんなが拍手を始める。するとピノックは振り向いてにこやかに答礼し、おもむろに袖へ引っ込んでしまったのである。これでは何にもならない。
 あとで小耳に挟んだところによると、「40番」が終れば必ずみんな拍手をしてしまうだろうから、ここで一度引っ込み、それから改めて「アヴェ・ヴェルム・・・・」を演奏する、と最初からピノックが決めていたのだとか。そりゃあしかし、お客をナメルモンジャアリマセンヨ(?)。

 そんなことがあったものの、しかし演奏自体は素晴らしかった。
 まず最初の「交響曲第40番ト短調」。冒頭から演奏に緊迫感が漲り、聴き慣れた主題が突き詰めたような美しさで始まったのである。聴いた席がステージに近い8列目だったため、弦が非常に近く、木管が彼方に引っ込んで聞こえるというバランスだったので、内声部の絡みがあまりよく味わえなかったのだけが残念だったが、この曲の良さに改めて浸れたのは幸いであった。

 2つの祈りの曲でも、彼の指揮は鮮やかだ。特に「レクイエム」の「Dies irae」(怒りの日)での切込みの凄まじさなどはまさにピノックならではのもので、モーツァルトが死の直前に書いたこの作品のデモーニッシュな側面を、余すところなく浮き彫りにしてくれる。オーケストラが、巧い。
 声楽ソリスト(望月万里亜、青木洋也、中嶋克彦、山本悠尋)は合唱団の中に分散して位置し、合唱の中のソリストともいうべき形で歌っていたが、祈りとしてのこの曲の性格を重視するなら、これは実に適正な方法だろうと思う。

 終演は4時過ぎ。ホールの正面口を出ると、ホテルニューオータニの西側高台の端に並ぶ高い木立から差し込む木漏れ日が、この上なく美しい。「ト短調交響曲」の第1楽章にぴったりの寂しい光景である。残雪でもあれば、なおさら美しかったろう。

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