2019-12

2019・12・27(金)太田弦指揮大阪交響楽団の「第9」

       ザ・シンフォニーホール  7時

 最近注目されている新人指揮者の一人、太田弦(大阪響正指揮者)の指揮を初めて聴く。
 今年25歳、札幌出身で東京芸大に学び、2015年の東京国際音楽コンクールの指揮部門で2位になった人だ。彼は先日、東京で新日本フィルを指揮する演奏会を予定していたが、「原因不明の高熱」のため降板を余儀なくされていた。
 今回はベートーヴェンの「第9」を元気で指揮できたのは祝着。

 これは感動の第九」と題された特別演奏会。共演の合唱は「はばたけ堺!合唱団」と「大阪交響楽団 感動の第九 特別合唱団2019」、声楽ソリストは四方典子、糀谷栄里子、二塚直紀、萩原寛明。コンサートマスターは森下幸路。

 さて、その太田弦の指揮だが、第1楽章序奏の四度と五度の下行モティーフが、昔のワルターの指揮と同じように非常に鋭く奏され、続く第1主題もかなり鋭角的なアクセントを以って演奏されはじめたので、これはなかなか面白いことをやる指揮者だなと思い、この音型が全曲を統一する役目を持っているからには、それを巧く展開してくれるのかと期待したのだが━━。
 残念ながらそのあとは、その鋭いメリハリも薄らぎ、ごく普通のスタイルになって行ってしまったのはどういうわけか。

 少なくとも今日の「第9」を聴いた範囲で言うなら、彼の指揮はどうも譜面上の正確さだけを追い求めることに集中していたような印象がある。音楽が崩れないように、ただきちんと演奏することだけにこだわった指揮のように聞こえてしまったのである。

 経験の少ない若い指揮者が「第9」を指揮した時に、「未だ早い」とか、「深みが足りない」とか言って批判するような気は私にはないし、誰であろうと若いなりの感性による「第9」を演奏する権利があると思うのだが、それならもっと、傍若無人でも大暴れでもいいから、若者らしい気魄、思い切って冒険を試みる精神が欲しいのである。ただ生真面目に、常識的に演奏された「第9」では面白くない。
 魔性的な陰翳を表現するのは無理としても、せめて抑え難い感情の昂揚、熱狂といったものがなければ、「第9」という巨大な世界へのアプローチにはなり得まい。━━ただ、今日の演奏では、第3楽章が清らかな叙情を湛えて、これは良く出来た演奏と言えるものだったと思われる。

 なお「第9」のあとに、アンコールのような形で、声楽を加えた「蛍の光」が演奏された(このオーケストラ編曲はなかなか良かった)。
 合唱団は、かなりの人数ではあったものの、些か粗く、パワーも少々弱い。「第9」では、ほんの1度だけだが、2人か3人、女声で「飛び出し」た人がいたけれども、余程経験のない人たちだったのか。

 声楽ソリストでは、萩原が少し物々しく凝った歌い方だったものの、概して好演だった。
 この声楽ソリストたちはアンコールの「蛍の光」にも参加していたのだが、カーテンコールで指揮者がソリストたちに対して全く「讃え」ず、最後も自らとオーケストラのみの答礼だけで終らせてしまったのには、ステージマナーとして違和感が残った(普通は大トリでもう一度声楽ソリストたちをも呼び戻すものだろう)。

 なお今日は、「第9」の前に、池田洋子をソリストに、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」が演奏された。各楽章それぞれが、こんなにも一定のテンポ、一定のニュアンスのままで演奏されたのを聴いたのは、初めてである。
 9時20分頃終演。

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