2019-10

2019・10・19(土)ピエタリ・インキネン指揮日本フィル

      サントリーホール  2時

 日本フィルハーモニー交響楽団が、首席指揮者ピエタリ・インキネンとともに、ベートーヴェン・ツィクルスを開始。ただしプログラムはドヴォルジャークのオペラ「アルミダ」序曲、「ピアノ協奏曲第4番」(ソロはアレクセイ・ヴォロディン)、「英雄交響曲」という選曲になっていた。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 ドヴォルジャークのこの曲を加えたのは、インキネンがプラハ響の首席指揮者を兼任し、この作曲家を取り上げることにも力を入れているからだそうな。通常のツィクルスとは異なり、ベートーヴェンだけでやって行くという形ではないらしい。
 ━━この序曲を聴いたのは、私は実は初めてだ。トランペットにヤナーチェクの先駆のような使い方が聞かれるなどという、興味深い部分もあったものの、言っちゃ何だが、必ずしも印象に残る作品というものでもない。

 「英雄交響曲」は弦14型編成による演奏だが、コントラバスは7本を揃えており、低弦を充分に鳴らして、重厚な響きをつくり出していた。贅肉のない、明晰ですっきりしたスタイルながら、骨太で豊かな音をも備えたベートーヴェンである。インキネンが、スタンダードな編成規模を持つ日本フィルとの共同作業に際し、殊更にピリオド楽器的なアプローチを採らず、もちろん豊満壮大主義のサウンドなどを求めず、このように中庸を得た解釈を採ったのは、賢明な選択と思われる。

 第1楽章は、声部の交錯、均衡、音の緊迫感などの面などを総合して、ほぼ完璧に近い出来といってもよかったであろう。ただ、なぜか第2楽章と第3楽章では緊張感も、音の濃密さもやや希薄になったような感がないでもなかったのだが━━第4楽章途中からは盛り返して、若々しい勢いを以って全曲を結んで行った。
 1番フルートと1番オーボエも快調だったし、また3本のホルンは、明確で鋭角的な、ややピリオド楽器的な吹き方で、第2楽章【D】のあとの6小節以降の有名な個所(ここは3本で吹いていた)や、第3楽章のトリオ、第4楽章ポーコ・アンダンテのクライマックス【F】などで気を吐いていた。

 たっぷりした音でありながら、各パートが明晰さを保っていたこと━━特にチェロ・セクションはいい━━は嬉しい。
 ただ一つ、こうした音づくりの中で、いつもとは違う奏者が叩いていたティンパニだけには、大きな疑問が残る。今回は、太いドスンという音の、敢えて言えば旧式なスタイルの叩き方で、特に強く叩かれた時のEs音は、オーケストラ全体の音色を鈍らせ、濁らせた。これは、少なくともインキネンがふだん構築する清澄な音色とは全く異質なものである。万が一、これがインキネンの指示だったのなら、彼には些か疑問を呈さなければならないが・・・・。

 協奏曲を弾いたヴォロディンの演奏は透明な美しさがあり、インキネンのベートーヴェンとはイメージが合う。アンコールでのシューマンの「献呈」の音の綺麗さには驚嘆させられた。

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