2019-08

2019・8・23(金)セイジ・オザワ松本フェスティバル
ファビオ・ルイージ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ

     キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 7時

 22日の「エフゲニー・オネーギン」(2日目)で題名役を歌ったバキルチは、体調不良のため、初日公演に続いて24日の3回目の上演をも降板するということが今日発表された(代役は初日と同じアンダー・キャストの大西宇宙)。
 クヴィエチェンの代わりにわざわざ来ながら、1回しか歌えなかったとはなさけない、という人もいるが、フェスティバル事務局に話を聞くと、彼は声楽ソリストの中では誰よりも早く(8月1日)日本に来て、一所懸命練習し、一所懸命準備するなど、彼なりに努力していたのだそうだ。それを聞くと、ちょっと可哀想にもなる。
 体調不良とあらば、人間だから致し方ない。次の機会には、元気で来てもらおう。

 さて今日は、ルイージが指揮するサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の「オーケストラコンサートA」だ。シュミットの「交響曲第4番」と、マーラーの「交響曲第1番《巨人》」が演奏された。コンサートマスターは前者が矢部達哉、後者が豊嶋泰嗣。

 ルイージは予想通り、昨日の「オネーギン」とは打って変わった情熱的な指揮。劇的な起伏に富んだ演奏をSKOから引き出した。
 シュミットの交響曲では緻密で澄んだ音色の弦を中心にスケール感豊かな音楽を構築して、この渋い作品の美しさを浮き彫りにしてくれた。
 一方「巨人」では、テンポを巧みに調整して曲想に更なる変化を与え(第2楽章)、また劇的な頂点に向けて驀進する緊迫感といったもの〈第4楽章〉をもつくり出していた━━こういうドラマティックな表現のせめて半分でも昨夜の公演で出してくれていたら、あんなあっさり味の「オネーギン」にはならなかっただろうに。

 また、この「巨人」の演奏では、スコアの指定を上回るほどのメリハリの強さも印象的だった。特に第2楽章での低弦のリズムのアクセントの強烈さ、第3楽章で木管群から引き出した閃光のような鋭いリズム感も素晴らしい。なお第3楽章冒頭のコントラバスはトゥッティで弾かれていたが、これはソロで演奏されるより、よほど安定していて聴きやすい。
 ともあれルイージは、これまでのSKOとの演奏でも証明されているように、マーラーの交響曲ではとりわけ激烈なアプローチを行なう人である。

 「巨人」のあと、客席は総立ちの熱狂。SKOも相変わらず上手い。本気になった時のこのオーケストラは、並外れた力を発揮する。ルイージも、このフェスティバルでは既に結構な人気を集める存在のようだ。たとえ小澤征爾の指揮でなくても、SKOが良い指揮者のもとでこういう卓越した演奏を続けている限り、SOMも聴衆の支持を集めることができよう。
 ただしこのオケは、指揮者によって演奏に極端なムラを生じさせるのが欠陥で、そこにこのフェスティバルに及ぼしかねない危険性がある。

 9時20分頃終演。250円の切符を買って松本駅行きの直行シャトルバスに乗る。これは大型の観光バス仕様で、結構速い。
    ☞(別稿)信濃毎日新聞
    ☞(別稿)モーストリー・クラシック11月号「オーケストラ新聞」

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