2019-07

2019・7・25(木)バーンスタイン:「オン・ザ・タウン」東京公演初日

      東京文化会館大ホール  6時30分

 7月15日に兵庫県立芸術文化センターで観た「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019」の東京公演。

 配役等は概ね同一で、東京初日とあって、活気に富んだステージと演奏が繰り広げられた。歌手陣とダンサーたちも上手いが、多国籍オーケストラたるPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)が実に達者で、感服する。佐渡裕も、こういうレパートリーにかけては、盤石の構えだろう。彼の最良の面が示された上演である。

 先日、ある重要な関係スタッフから、第2次大戦末期に作られたこのミュージカルには、やはり「戦争」が影を落している━━という見解を聞かされた。
 たとえば第2幕冒頭のクラブの場面で、ダイアナ・ドリームが「暗い歌」を歌っているとヒルディがそれを遮り、明るい歌を自ら歌い始める時に、それを「制服の水夫さんたちの要求」だと言い、水夫たちもそれを証明すると、アナウンサーやドリームが「それなら仕方がない」と引っ込んでしまうくだり。
 あるいは幕切れ近く、水夫たちや人々が「いつかきっとまた会える」と歌い合うくだり。
 そういう個所などに、その「影」が感じられる、と謂う。
 私も、それには全く同感である。

 ただ、私が7月15日の項で「屈託ない、良き時代のアメリカ」と書いたのは、そういう紛れもない「戦争の影」をも、すべてこのような明るいミュージカルの中に巻き込んでしまうことを可能にしてしまう、当時のアメリカの凄まじい自信と楽観性のようなものに震撼させられたからにほかならない。
 太平洋戦争の直後、私が幼い頃に街のあちこちで見た進駐軍の米兵たちにも、未だそういう雰囲気が漲っていたように感じられたのだ。

 それを最終的に木端微塵にしたのは、おそらくは1960年代のベトナム戦争だったろう。以降、アメリカは今になってもその屈折した心理に引きずられる状態が続く。いま、トランプ政権の下で「アメリカ・ファースト」を絶叫する人々の声は、その屈折した心理が形を変えて現れた、一種の悲鳴のようにさえ思われる。
 ━━そうした日々のさなかに、突然私たちの前に現われたのが、この、屈託ない時代のミュージカルなのだった・・・・。28日まで上演される。

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」