2019-07

2019・7・24(水)大野和士指揮バルセロナ交響楽団

     Bunkamuraオーチャードホール  7時

 サントコフスキーの「2つの三味線とオーケストラのための協奏曲~カザルス讃&二重の影の歌」と、ベートーヴェンの「交響曲第9番」とを並べたプログラム。

 「吉田兄弟」(吉田良一郎・吉田健一)が三味線のソリを弾く前者については、既に7月24日の名古屋公演で聴いている。
 ただしカデンツァの部分と、それにアンコールで2人が弾いた三味線版「鳥の歌」は、名古屋で聴いた演奏とは若干異なるようだ。やはり即興的な要素も織り込まれているのだろうか。
 熱演ではあったが、しかし、こう言っては何だが、このコンチェルトは、2度も3度も繰り返して聴きたくなるような作品とは言い難い。

 プログラム後半は、ベートーヴェンの「第9」だった。この曲を今回の来日ツアーに含めた理由については、マエストロ大野もプレトークで述べていたし、7月24日の項にも書いた。協演は東京オペラシンガーズ、ジェニファー・ウィルソン、加納悦子、デヴィッド・ポメロイ、妻屋秀和。

 名古屋の「三角帽子」があまりに鮮やかだったので、「第9」でも━━このオケは多分こういう曲には慣れていないだろうとは思いつつも━━それなりの演奏が聴けるかとは思っていたのだが、どうやらこれは甘すぎたようである。
 第2楽章のトリオでのホルンのソロは終始リズムとずれっぱなし。これだけ何度繰り返しても合わぬというのはプロのオケでは珍しいケースだろう。
 さらに唖然とさせられたのは、第4楽章冒頭のファンファーレでティンパニが出遅れ、慌ててスティックを持って移動しながら途中から弱々しく(!)叩き始めたことであった。管も自信無げに、ばらばらに入り始める━━従って薄い、スカスカな音群になった━━という、何とも信じられぬような事故になってしまった。

 昔、1962年だったか、シャルル・ミュンシュが日本フィルを指揮した時に、このファンファーレで金管が落ちて大混乱になった事件があったが━━当時の批評では日本フィルの金管の不備がなじられたものだったが、真相はミュンシュが向けた鋭い緊張の視線に金縛りとなったティンパニ奏者が無我夢中で飛び出してしまったのが原因、と、私は後でその奏者本人から聞いた━━今回の一件も、それに匹敵する大事故だろう。
 今回の事故の原因がティンパニ奏者にあったのか、それとも指揮者にあったのかは断定し難いが、いずれにせよ、指揮者は演奏を止めたり、やり直させたりすることなく、そのまま最後まで続けて行ったのである。

 その他、使用楽譜の版が、第1楽章と第4楽章で食い違いを聞かせていたり、東京オペラシンガーズやポメロイ、ウィルソンらが怒鳴り過ぎていたりと、随分とまあ、粗っぽい印象を与える演奏だったことは確かであった。

 だが━━たった一つ、これはいいなと思わされたのは、大野とこのバルセロナ響が響かせる音楽の表情に、第1楽章冒頭からして曰く言い難い、不思議なあたたかさが感じられていたことであった。
 たとえ技術的には完璧でも、冷たく取り澄ました表情の演奏や、音楽に感動の表情の全く無い演奏の「第9」も少なくない今日、このようにあちこちガタピシしていたといえ、人間的な雰囲気を感じさせた演奏の「第9」も悪くないものだな、と思わされた。今日の救いは、ここにあっただろう。

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