2019-07

2019・7・16(火)ポリャンスキー指揮ロシア国立交響楽団

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 「ロシア国立交響楽団」といっても、かつてスヴェトラーノフが指揮していた「ロシア国立(State)交響楽団」とは違うオーケストラなのだから,紛らわしい。4年前の7月に来日した際にもこの邦訳名称が使用されていたが━━。

 これは、かつてロジェストヴェンスキーが指揮していた「ソビエト国立文化省交響楽団」を旧称とし、その後ワレリー・ポリャンスキーを芸術監督として「ロシア国立シンフォニック・カペレ」と改称したオーケストラの方なのだ。いくら商策上とはいえ、そしてカッコ付でシンフォニック・カペレと表記してあるとはいえ、愛好家たちを混乱させるのはいけないだろう。
 ロシアのオーケストラは,ただでさえ名称がややこしくて混同されるケースが多いのだから、邦訳にも配慮して欲しいものである。

 そこで、今回のこのワレリー・ポリャンスキーを芸術監督兼首席指揮者とする「シンフォニック・カペレ」。今日から28日まで計10回の日本公演。
 プログラムの主力はチャイコフスキーで、今日も「スラヴ行進曲」「ピアノ協奏曲第1番」「交響曲第5番」という曲目で編成されていた。ピアノのソロはキエフ出身のアンナ・フェドロヴァ。

 2年前にチャイコフスキーの「後期3交響曲」を一夜に演奏した時に比べ、今日の1曲目の「スラヴ行進曲」の演奏が恐ろしく荒っぽかったので、このオーケストラ、どうしたのかと思った。ツアー初日の、しかも1曲目の「小品」とあって、会場のアコースティックもテストせずに、ぶっつけ本番ででもやったのかなと思ったのだが━━。
 だが幸いに、次のコンチェルトでは、弦も管も落ち着きを取り戻し、フェドロヴァのソロともバランスの取れた演奏が聴けた。

 そして休憩後の「第5交響曲」では、ロシアのオーケストラならではの豪壮なチャイコフスキーが繰り広げられたのである。
 このホールは席の位置によってオーケストラのバランスも音色も異なって聞こえるという特徴が際立つのだが、1階席後方の上手寄り側で聴いたこの「第5交響曲」では、ロシアのオケ特有の濃密で重厚な弦の拡がりの「彼方から」金管群の咆哮が聞こえて来る、という印象になった。だがおそらく、2階席あるいは上階席のどこかで聴けば、金管群はもっと強烈な、つんざくような音色で突進して来たかもしれない。

 いずれにせよ、1階席で聴いた範囲では、ポリャンスキーが指揮した時のこの「シンフォニック・カペレ」には、ペレストロイカ以降、やや薄らぎ気味になっている昔ながらのロシアのオーケストラのイメージ━━豪快でパワフルで、大地から湧き上がるような野性的な力を備えたオーケストラという特徴が、まだ充分に残っているように感じられたのであった。
 どの国のオーケストラも「お国柄」を失い、インターナショナルな傾向を強くしている今日、このロシアの良きカラーは、大事にしてもらいたいという気がするのである。
 荒っぽくて雑なところもあるけれども、いざ本気になると凄いリキの入った演奏をする━━という印象は、2年前に感じたそれと、全く同じであった。

 アンコールでは、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」からの「葦笛の踊り」と、「眠りの森の美女」からの「ワルツ」をすこぶる豪壮に演奏した。
 そのあとポリャンスキーが腕時計を指差し、「これでおしまい、もう寝る時間です」というジェスチュアを示し、これでお開きかと思わせておいて、いきなりショスタコーヴィチの「ボルト」の、あの愉快な「荷馬車曳きの踊り」を、物凄い大音響で賑やかに開始。
 しかも指揮者は、オーケストラに演奏をさせたまま悠然と引き上げてしまうというユーモア。曲が曲だし、客は大笑いで、手拍子で乗りまくった。もう一度全員のカーテンコールがあって、指揮者が退場すると、今度はコンサートマスターが譜面をつかんで、楽員たちに「もういい、みんな早く帰ろうぜ」という身振り。爆笑と拍手のうちに演奏会は幕。

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