2019-07

2019・7・11(木)ヘンリク・ナナシ指揮読売日本交響楽団

     サントリーホール  7時

 ハンガリーの指揮者ヘンリク・ナナシが日本初登場、読響を振ってコダーイの「ガランタ舞曲」、サン=サーンスの「ピアノ協奏曲第5番《エジプト風》」、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」を演奏した。

 このナナシという名の指揮者、6年前に、当時彼が音楽総監督を務めていたベルリン・コーミッシェ・オーパーで、チャイコフスキーの「マゼッパ」を指揮していたのを聴いたことがある(→2013年3月30日の項)。その時38歳とのことだった。
 実に切れ味のいい颯爽とした音楽をつくるので、大いに気に入ったものだ。ドイツ在住の知人は、歌劇場事務局が「ヘンリーク・ナーナーシ」と発音されたい、と言っていた、と教えてくれたが、今回、読響は「ヘンリク・ナナシ」と表記している。

 あの時と同じように、今日の指揮も、素晴らしく勢いがいい。オーケストラを存分に鳴らし、速めのテンポを採り、さらに激しく動かす。「ガランタ舞曲」の後半などでは、ナナシはアンサンブルが合おうが合うまいが遮二無二突進するので、流石の読響も、とにかくついて行く、といった感じになることもあった。
 だが、それにもかかわらず演奏には、特に前半、ハンガリーの民族音楽の━━日本人にも不思議な懐かしさを感じさせるあの独特の節回しの持つ情感が、豊かに溢れていたのである。

 「管弦楽のための協奏曲」でも同様、引き締まった切れ味のよさが目立つ。急速なテンポが突然溶解して幅広い音型に変わるあたりのナナシの呼吸も巧妙で、読響(コンサートマスターは長原幸太)もまた見事に対応し、演奏をしなやかなものに感じさせていた。

 かように颯爽と小気味よくたたみ込んで行く指揮で聴くと、この曲は甚だスペクタクルな様相をも見せる。第4楽章の、例のショスタコーヴィチの「7番」の「戦争の主題」をパロディ化した部分でも、オーケストラがグロテスクに爆笑するさまが、いつも以上に巧く表現されているように思えたのだった。
 ただ、全曲にわたりあまり勢いよく演奏されると、いろいろな楽器のソロと管弦楽とが協奏する微細な妙味が、些か薄らいでしまうという感もなくはないが。

 この2曲の間に演奏されたサン=サーンスのピアノ協奏曲「エジプト風」では、フランスの若手(1990年生れ)リュカ・ドゥバルグが、洗練された澄んだ音色でソロを弾き、ナナシと読響もそれに呼応して行った。エンディングでオーケストラが力感豊かに決めたのは、巧い演出である。

 なおドゥバルグのソロ・アンコールは、今彼が力を入れているというスカルラッティの作品でも弾いてくれるのかと思ったら、フランスのレパートリーに合わせてサティの「《グノシエンヌ》第1番」だった。先入観で言うわけではないけれども、フランス人がサティを弾くと、得も言われぬ洒落た味が出る。

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」