2019-05

2019・5・31(金)川瀬賢太郎指揮東京シティ・フィル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 近年快調の若手、川瀬賢太郎が、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に客演、得意のショスタコーヴィチ・プロを指揮。
 交響詩「十月革命」、「ピアノ協奏曲第2番」(ソリストは田村響)、「交響曲第9番」という意欲的な選曲である。コンサートマスターは「特別客演コンマス」の荒井英治。

 川瀬は最近、ショスタコーヴィチを得意としているから、さぞかし良いだろうとは思っていたが、その予想よりもさらに良かった。
 何より、リズムの切れがいい。この作曲家独特のアイロニーや、才気煥発の曲想の面白さなどが、いっぱいに噴出して来る。ひた押しに押すエネルギー性なども、例えば協奏曲の第1楽章などでは見事なものであった。

 それは実にまっすぐな演奏であって、ひたむきに真正面から音楽にぶつかって行くという姿勢が感じられて好ましい。ショスタコーヴィチの場合、作品によってそれが成功する場合と、裏目に出る場合に分かれるだろうが、今日のような曲目の、特に前半の2曲などは、明らかに成功を収めたものに当たるだろう。

 前半の2曲を2階席正面で聴いたあと、試みに後半は「業務上の理由で」席を1階の後方下手側に移して聴いてみたが、こちらでは残響も増え、音の響きが増す半面、低音域が少し重くなり、それに従って演奏もやや重いイメージに変わって、そのアイロニー感もやや薄れて来るという印象になった。

 もちろんこれは、客の入りの多寡によっても変わって来るので、一概にどうこうということは言えないし、また川瀬とシティ・フィルも、この「9番」を、第1部とは異なるアプローチで演奏していたのかもしれない。
 CDで聴く演奏が再生装置のグレードにより大きく影響されるのと同じように、ナマで聴く演奏も、ホールのアコースティックや、聴く席の位置によって左右される。そこが難しいところだ。

 だがいずれにせよ、指揮者としての川瀬賢太郎の実力が際立って上昇線を示していることは間違いないところだろう。
 シティ・フィルも躍動的な好演だった。このオーケストラがこれだけ一所懸命に演奏していることを、もっと多くの人たちに知ってもらいたいと思うのだが━━。

 オーケストラのアンコールとして、川瀬とシティ・フィルは、芥川也寸志の「弦楽のための三章(トリプティーク)」の第2楽章を演奏した。アルメニア風というか、ハチャトゥリアン風の曲想も出て来るといったように、彼の当時の好みを反映した曲だ。これがなかなか美しかったし、アンコールにこのような作品を取り上げるという姿勢も好ましく感じられる。
 一方、コンチェルトでの田村響のソロもストレートな力に満ちていたが、そのショスタコーヴィチのあとのソロ・アンコールにショパンの「夜想曲第20番」を取り上げたのは、どうみてもアンバランスで、腑に落ちぬ。

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

お知らせ

●2007年7月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年7月

Category

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」