2019-05

2019・5・13(月)METライブビューイング 「ヴァルキューレ」

     東劇  5時

 3月30日のメトロポリタン・オペラ上演のライヴ映像。ロベール・ルパージュの演出、カール・フィリオンの舞台美術による、2011年にプレミエされたあのユニークな舞台装置によるプロダクションである。

 今回はフィリップ・ジョルダンの指揮で、歌手陣は、グリア・グリムスリー(ヴォータン)、クリスティーン・ガーキー(ブリュンヒルデ)、ステュアート・スケルトン(ジークムント)、エヴァ=マリア・ウェストブロック(ジークリンデ)、ギュンター・グロイスベック(フンディング)、ジェイミー・バートン(フリッカ)、他━━と粒が揃っている。

 特に注目されたのは、ブリュンヒルデを初めて歌ったというガーキーだ。
 ドラマティックな女戦士というよりは、茶目っ気もある陽気な女性騎士といった雰囲気で、歌唱にも屈託の無さが感じられるだろう。これが「神々の黄昏」で、「怒れるブリュンヒルデ」として世界を救済する女傑となった時にどのような歌唱と演技を繰り広げるのか、ちょっと興味が湧く。
 METでは特に近年、意図的か偶然か、ヴァルキューレたちを猛女でなく、愛らしい女性騎士として描く傾向があるようだから、この方が人気も出るのかもしれない。

 フィリップ・ジョルダンの指揮が、なかなか良い。物々しい重厚なワーグナーでなく、むしろサラリとした表情で押して行くタイプだが、極めて流れがいい。それでいながら「ヴォータンの告別」の頂点での壮大な昂揚感など、聴き手の感情を揺り動かす卓越した力感を示す指揮である。
 来年からウィーン国立歌劇場の音楽監督になる人だが、楽しみな存在だ。

 ロベール・ルパージュの演出は、父と娘の愛情を強く描くなどの特徴はあるものの、概してトラディショナルなスタイルで、それほど新しいものはない。むしろ例の━━並べればスノコみたいになる巨大な板が縦横無尽に動く、あの見事な舞台装置にすべてを託したような演出である。
 この大がかりな装置は、古エッダの発祥地アイスランドの噴火や地震などの地殻変動から発想されたものだということが、インタヴュ―の中で説明されていた。面白いアイディアだと思う。

 なお今回の音響は、録音が少しこもり気味で、特にヴォーカルのパートの響きの抜けの悪さが気になった。METのライヴでは、時々中継の音質にムラがある。
 案内役には、久しぶりにデボラ・ヴォイトが登場していた。プレミエの時にブリュンヒルデを歌っていた彼女である。以前のような元気の良さ、闊達さが何だか薄れたような雰囲気なのがちょっと気になるけれども、やはり巧い。ロイヤル・オペラ・ライヴの女性案内役と違い、無用に張り切って大声を出すこともないから、感じもいい。。

 上映時間は、休憩2回を含み、4時間51分。客席は結構な入りである。ワーグナーものの映像にこれだけ客が入るとは、まことに祝着である。

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