2019-03

2019・3・26(火)ウラディーミル・ユロフスキ指揮ベルリン放送交響楽団

      サントリーホール  7時

 「ユロフスキ」と「ユロフスキ―」のどちらが表記として適切なのか判らないけれど、招聘元ジャパン・アーツは「ユロフスキ―」でやっているようである。スペルは「Jurowsky」ではなく「Jurowski」なのだが・・・・。

 今日のプログラムは、前半が20日と同じモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲と「ピアノ協奏曲第21番」。
 オーケストラも、さすがに滞日6回目の公演となればアンサンブルにも落ち着きが出て来て、先日のようなガサガサした演奏ではなくなった。コンチェルトのソリスト、レイフ・オヴェ・アンスネスは、今日はソロ・アンコールにモンポウの「《街外れ》第1番」という美しい曲を弾いてくれた。

 プログラム後半は、マーラー編曲のベートーヴェンの「第7交響曲」なる珍しい曲。編曲といっても、作品の構造自体を変更しているわけではなく、あくまで管弦楽法を改訂するにとどまっているものだ。
 ただ、マーラー版のスコアが手許になく、またどこまでが指揮者の表現なのかどうかが定かでない━━という保留要素はあるものの、オリジナルと比較してかなり濃厚な、少々えげつないまでの手が加えられているのは確かなようである。

 聴いて気がついた範囲で、いくつかの点を挙げれば、例えば全曲にわたり、過剰なほど執拗に施された細かいクレッシェンドとデクレッシェンドであろう。これがもし指揮者の独断で入れたのでなければ、マーラーの改訂における最大の特徴であろうと思われる。
 また、再現部直前の弦と管のバランスにはかなりの変更があったようだし、コーダにおけるバスのオスティナートも異常なほど誇張されて響かせられていた。第3楽章トリオにおけるティンパニの奏法、第4楽章のリズム主題の響かせ方にも、原曲とはだいぶ違いがある。
 第4楽章コーダでは、全管弦楽のバランスを含め、マーラーはもうここぞとばかり手を替え品を替え、オリジナルの視点から見れば畸形と感じられるほどに響きを変えてしまっている。よくぞここまでやったものだ、と呆気にとられずにはいられない。いかにも「鼻につく」手法ではある。だがしかし、こういう版を聴かせてもらったことに対しては、礼を言おう。
 アンコールは、またマーラー編曲によるバッハの「アリア」。

2019・3・26(火)新国立劇場 マスネ「ウェルテル」

      新国立劇場オペラパレス  2時

 2016年4月にプレミエされたニコラ・ジョエル演出のプロダクションで、落ち着いた良い舞台だ。
 今回の上演の指揮はポール・ダニエル。声楽陣はウェルテルをサイミール・ピルグ、シャルロットを藤村実穂子、アルベールを黒田博、ソフィーを幸田浩子、大法官を伊藤貴之、シュミットを糸賀修平、ジョアンを駒田敏章、ブリューマンを寺田宗永、ケッチェンを肥沼諒子、新国立劇場合唱団、児童合唱が多摩ファミリーシンガーズ。管弦楽が東京交響楽団。

 演出に関してはプレミエ時(2016年4月6日の項)と基本的には同じ印象ゆえに詳細は省く。第3幕におけるアルベールとシャルロット夫妻の諍いの描写が前回よりは少し明快になったような気もするけれど━━定かではない。
 アルベールには黒田博が、ふだんの彼とは別人のようなメイクで、穏やかで落ち着いた役柄として演じていた。

 そして、藤村実穂子のシャルロットが素晴らしい。イメージからすると合致しないのではないか、と思われるようなキャラの組み合わせではあったが、さすが藤村さん、見事なものであった。前回のエレーナ・マクシモア演じるシャルロットが控えめで受け身な女性のイメージだったのに対し、藤村実穂子のシャルロットは、おとなで、分別があり、それが感情を抑えきれなくなるという矛盾をはらんだ女性として描き出されるのである。
 ともあれ、彼女が歌い始めると、舞台上のすべてのものが、彼女一人に集中してしまうほどだ。かつてはバイロイトのヴァルトラウテ役で劇場の空気をビリビリと震わせたほどの彼女の声も、最近はかなり柔らかくなって来たような気がする。

 ポール・ダニエルの指揮も、詩的な雰囲気を備えて、なかなか良い。東京響も悪くなかったが、ヴァイオリン群の音に厚みさえ出ていれば、とそれがいつも惜しまれる。

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