2019-02

2019・2・6(水)新国立劇場「タンホイザー」(4日目)

      新国立劇場オペラパレス  5時30分

 ハンス=ペーター・レーマン演出、オラフ・ツォンベック美術・衣装によるワーグナーの「タンホイザー」。2007年プレミエ、2013年再演に次ぐこれが3度目の上演になる。

 今回の演奏はアッシャー・フィッシュ指揮東京交響楽団、題名役をトルステン・ケール(ケルル)、エリーザベトをリエネ・キンチャ、ヴェーヌスをアレクサンドラ・ペーターザマー、ヴォルフラムをローマン・トレケル、領主ヘルマンを妻屋秀和、ヴァルターを鈴木准、ハインリヒを与儀巧、ビーテロルフを萩原潤、ラインマルを大塚博章、牧童を吉原圭子・・・・という顔ぶれである。合唱はもちろん新国立劇場合唱団。

 所謂パリ版を使用(但し第2幕にはドレスデン版からの「ヴァルターの歌」を復活挿入)しているのは結構だが、第2幕最後の魅力的なアンサンブルの大半をカットするという「暴挙」を敢えてしているこのプロダクションは、正直なところプレミエ時からあまり好きではなかった。そのあたりのことは、2007年10月8日2013年1月23日それぞれの項ですでにズケズケと書いたので、繰り返すのは避ける。
 プレミエの時、百数十小節にも及ぶ大規模なカットは断じて納得できぬ、と東京新聞の批評欄に書いたら、新国立劇場の広報から「カットした小節数の計算が違う」とかいうクレーム(?)が新聞の方に来たことを、これを書いていたら思い出した。

 今回、改めて上演をじっくりと観てみると、演技はなかなか微細に表現されていることは認識できたが、全体に「燃えない」舞台であることには変わりはないようである。
 また、歌合戦の場でのヴァルトブルク宮廷の群衆のメイクが━━多分宮廷人たちの異常さを強調するためだということは理解できるのだが━━何だか顔を異様に大きく見せ、小人の集団のような恰好にしてしまっているところも、プレミエ時と同様、やはり気になった。

 タンホイザー役のトルステン・ケルルは、3日目までの公演では調子が悪かったと聞くが、今日の出来ならまずどうということはないだろう。だが、第1幕最後で声が一瞬ひっくり返った所からすると、やはり本調子ではなかったものと思える。
 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハを歌い演じたローマン・トレケルも、以前ベルリンあたりでよく聴いた頃の爽やかで颯爽たる声はさすがに失われて来たのかな、という感もするが、今回のヴォルフラムを非常に屈折した性格の男として描き出していた演技を見ると、それを多少、歌い方にも反映させていたのかもしれない━━。

 三澤洋史が率いる新国立劇場合唱団は、いつもながら素晴らしい。
 その一方、オーケストラの音がいつもながら痩せており、ワーグナーの音楽の壮麗な厚みにも、壮大なスケール感にも乏しいのには、本当に落胆させられる。もっとも今回の指揮者アッシャー・フィッシュが、終始イン・テンポで、ドラマとしての音楽の変化も昂揚も充分に描き出せていなかったのがまず最大の問題だったであろう。

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