2019-01

2019・1・8(火)山田和樹指揮読売日本交響楽団

    サントリーホール  7時

 山田和樹がこの2週の間に首席客演指揮者として読響を振る3つの演奏会、その最初のものがこれ。
 今回は、サン=サーンスの長く壮大な「交響曲第3番」(オルガンは室住素子)を冒頭に置き、第2部はラロの「チェロ協奏曲」(ソロはニコラ・アルトシュテット)で洒落た味を出し、最後を豪壮華麗なレスピーギの「ローマの祭」で締めるというプログラミング。コンサートマスターは長原幸太。

 「3番」では、綿密な造りの前半2楽章と、豪壮な後半2楽章の対比という、山田和樹の巧みな設計に基づいた指揮が効果を発揮した。もっとも、演奏会の前半でこのようなクライマックスが築かれてしまうと、こちらのペースがやや乱れてしまう向きがなくもないけれど。

 ラロのこの「チェロ協奏曲」をナマで聴いたのは、何十年ぶりかになる。第1楽章のあの物々しいモティーフを聴くと、何だか懐かしい気持に引き込まれる。第2楽章でチェロがフルートの「珠を転ばす」ような音型と交流する個所も、録音で聴くよりナマで聴いた方が、両者の楽器の距離感により面白い効果が味わえるのではなかろうか。
 アルトシュテットは、昨年ハイドン・フィルハーモニーと来日した時の指揮とソロで聴いたばかりだが、今回は何かマイペースで弾いているような闊達な雰囲気で、ややあっさりした演奏ではあったものの、愉しめた。
 演奏と同じようにきびきびしたステージでの身のこなしで、カーテンコールで出て来るたびに、トップサイドの奏者の頭越しに手を差し延べてコンマスの長原に握手を求めるという動作が、慌ただしくて、何となく可笑しい。
 アンコールでは、その長原との掛け合いで、ピッチカートで応答し合うシベリウスの「水滴」という不思議な小品を演奏してくれた。2人で顔を見合わせて何故かワハハと笑ったくだりも演奏の一部と考えれば、実にユーモアたっぷりのステージであった。

 「ローマの祭」は、山田和樹の念入りな演奏設計と構築の巧さ、オケを煽り立てる呼吸の見事さに加え、読響の上手さ(客演のホルン・ソロは別としてだが)と豊富な大音量と、その色合いの多彩さが印象的だった。4つの祭のそれぞれの特徴を際立たせた演奏は、幕切れは何となく勢い余った感もあったが、とにかく胸のすくような趣があったのである。
 バンダのトランペットは2階客席センター通路の下手側で咆哮していた。そして、アンコールの「ウィリアム・テル」の序曲からの「スイス軍隊の行進」でも、最初のトランペットをそのバンダに吹かせるという演出が面白い━━ティンパニとの絡みはズレズレの響きに聞こえたが、これは両者の距離ゆえで、仕方がない。
 それにしても山田和樹という人は、現時点では、やはりこういったラテン系のレパートリーに強みを発揮しているように思われる。

2019・1・7(月)ピエタリ・インキネン指揮プラハ交響楽団

      サントリーホール  7時

 このチェコの名門オケは、少なくともこの10年の間に、イルジー・コウト(2008年1月13日の項参照)、ズデニェク・マカル(2010年1月14日の項)、ピエタリ・インキネン(2016年1月18日の項)、ペトル・アルトリヒテル(2017年3月16日の項)ら、いろいろな指揮者と来日して、その都度異なる表情を聴かせてくれている。
 そのうち、2015年からこのプラハ響首席指揮者を務めているインキネンは、わが国では日本フィルの首席指揮者としておなじみだが、その他にも2017年秋からザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルの首席指揮者にもなっている。

 今日は、第1部では樫本大進をソリストにブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」が、第2部ではチャイコフスキーの「第5交響曲」が演奏された。
 ただし前半のアンコールで、樫本とインキネンがヴァイオリンのデュオを披露、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」の第2楽章をオケの数人のメンバーと一緒に演奏した上、チャイコフスキーのあとにもドヴォルジャークの「スラヴ舞曲」の「第10番」と「第8番」を演奏したので、終演は9時半近くになった。

 インキネンとプラハ響、あまり重くなく、引き締まった音で真摯に作品と取り組む演奏である。しっとりとして瑞々しい、端整な表情は、このコンビでの前回の来日の際に聴いたのと同じ特徴だ。
 ブラームスの協奏曲では樫本大進も伸びやかなカンタービレを効かせたが、彼もやはりベルリン・フィルのコンサートマスターらしく端整な傾向のソロなので、明るいが生真面目なブラームス像の再現とでもいう演奏になっていただろう。第2楽章のオーボエ・ソロ(女性奏者)は素朴な趣ながら、なかなか美しかった。

 一方、チャイコフスキーの交響曲でも、フォルティッシモは力感豊かながら決して威嚇的にならず、どこかに温かい雰囲気を感じさせる。
 チェコのオケと北欧人インキネンの若々しい気魄とがどう調和して、どのような良さが生れるか、という点にも注目したが、チェコのオーケストラ特有の素朴な落ち着いた味や、郷土的な色彩感といったものは、この演奏からはほとんど失われていた。とすれば、その代りに何が生れているかが最大の問題なのだが、厳しい見方かもしれないけれども、この演奏を聴いた範囲では、その辺はどうも未だよく判然としない。
 一方のインキネンにしても、むしろ指揮者に従順な日本のオーケストラ━━この場合は日本フィルだが━━の方に、彼の特質をストレートに反映させ得ているのではないかという気もする。

 ホルンの首席はちょっと変わった楽器の持ち方をし、「第5交響曲」第2楽章のソロをいとも楽々とダイナミックに吹き上げ、ティンパニ奏者はすこぶる芝居気のある身振りで、じわりと楽器を叩く。2人とも、演奏し終るとリズムに合わせ首を大きく振るなどして音楽に乗り、気合充分の様子を見せていた。

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